御曹司は高嶺の花に愛を刻む
「ほら。そんな顔しない」
「陽平は猿だ」
「ははは!言ってろ」
悪いが全くもって、やめる気はない。
「陽平」
「なんだ?」
まだ文句か?ククク
「好き」
ッッッ!!
俺は怒られるもんだと思っていて、すっかり油断していた。
ここで、そんなこと言われたら家に引き返したくなる。
すると、菜由がニヤっとして
「じゃ、行ってきまーす」
そう言って、俺の口にキスを落とし、下唇を吸い上げられ、すーっと頬を撫でたと思えば、会社の少し手間で停めた車から、さっさと降りて行ってしまった。
やられた!!
その日、まんまと俺は一日中、菜由がチラついて大変だった。
抑えるのに。
よっぽど、菜由のデスクまで行って連れ出してやろうか?
とまで思うほどに。
覚えとけよ。
今朝の俺たちを凄い形相で睨んでいたやつがいたとは、その時の俺たちは全く気づいてなかった。