御曹司は高嶺の花に愛を刻む
ディナーを食べて、シャンパンを飲みながらお礼を言う。

「陽平。ドレスも、ここのディナーも。
何から何まで、ありがとう」

「ああ。遠慮はなしだ。そうやって、素直に喜んでもらえるのが、俺は一番嬉しい」

陽平は本当に、嬉しそうに笑った。

「陽平。私をどうしたいの?」

これ以上、甘やかさないで。
本当に。

「そうだな。俺がそうなように、菜由にも俺無しじゃ生きられないようにしたいな」

そう言って、妖艶に微笑む。
もう。なってるよ。陽平。

「俺が、怖いか?」

そんな訳ない。私は首を横に振る。
前にも聞かれた。
陽平を怖いと感じた事はない。

むしろ、陽平が、父親のように、
いなくなってしまったら、、
と考える方が怖い。

「菜由。」

陽平の瞳が揺れる。
ここが、レストランだと言うのに。
そんな熱い視線を送らないで。
お腹の奥が、キュっとなる。

「外、出ようか。少し、歩こう」

陽平が、珍しく、目をそらしてそんな事を言う。
どうしたの?

「う、うん。ごちそうさまでした。」

「ああ。行こうか」

そう言って、陽平はまたいつもみたいに微笑んでくれた。
気のせいかな。



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