御曹司は高嶺の花に愛を刻む
「着きました」

運転手が声をかける。

「ああ。ご苦労様。迎えはいらない。お疲れ様」

運転手が綺麗な所作でドアを開けて、頭を下げる。

片方ずつ足をだし、車を降りると、スーツの襟をビシッと整えた。

周りが俺を見てザワザワと騒ぎ出す。

はぁ。始まった。

ったく。

見せもんじゃねぇぞ。

心の中で毒を吐く。

今日は兄貴の代理で来た。
下手な事はできない。

まぁ、仕事じゃないから、そこまで気にしなくていいか。

いちおう大人だし、舌打ちが出そうなのをグッと我慢し前を向く。

そして会場に入れば、みんな煌びやかなドレスやスーツに身を包んで今か今かとランウェイを見つめていた。

俺を見れば、女達は連れの男性がいても、目を大きく開いて頬を赤く染める。

女同士できているヤツは、特にうるさい。
目障りだ。

やめてくれ本当に。
気付けよ。ッチ。

結局、舌打ちした。
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