御曹司は高嶺の花に愛を刻む
後ろ姿からは、まるで誰も寄せ付けないようなそんなオーラが漂っていて、周りも一目置いている様だった。

"誰も話しかけてこないで"

彼女の綺麗な背中がそう言ってる。

あんなに、ショー中に、表情豊かな顔が隠れているなんて、誰も思わないだろう。

すると、テーブルに乗せていたであろう白のハンカチが落ちた。

俺は近付き、ハンカチを拾う。

そして、何と話しかけていいのかもわからず肩をトントンと叩いた。

指先で触れただけなのに、彼女の滑らかな肌の感触が、一気に全身を駆け巡る。

「これ」
やっとの事で、2文字。

他に何か言えなかったのかよ。


そして、彼女が振り向いた。

近くで見た彼女は、ただただ美しかった。
綺麗にメイクが施され、まるで人形のようだ。

すると彼女は、俺を見てしばし驚いたかと思いきや、フッと微笑みハンカチも受け取らず会釈をして会場からそそくさと出て行ってしまった。
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