御曹司は高嶺の花に愛を刻む
何だアレ。

俺を見て、騒ぐわけでもなく、
声すら聞かせてもらえなかった。
まさに高嶺の花みたいだな。

"俺ごときが話しかけてくんな"
そういう事なのか?

会釈はしてた。
高飛車な感じではなかった。

手の携帯を気にしていた様にも見えた。
急ぎの電話だったのか?


そして俺は、ハンカチを取りに戻って来るかどうか、くだらない賭けに出た。

戻って来なかったら、縁がなかったと諦めよう。そしたら俺の負け。

ただ、戻ってきたなら、今夜は帰さない。俺の勝ちだ。

この先どうなるのかも、自分がどうしたいのかもわからない。

ただ、
"今"を逃すな
と、本能が言っている。

俺はそれに、従うだけ。

そう思って、彼女が戻ってくるかもわからないのに大事にハンカチをテーブルに置くと、自分のドリンクを飲みだした。

俺の前には、彼女が残した皿とグラス。

確かに、彼女はここにいた。
夢じゃない。
彼女のグラスに着いた、口紅が教えてくれる。

さて、彼女はどう出るのかな?

なんて、ひとりでワクワクしてしまう自分におかしくなりながら酒を煽った。
< 34 / 228 >

この作品をシェア

pagetop