御曹司は高嶺の花に愛を刻む
しばらく経っても戻って来ない彼女に、やっぱりダメだったか。
俺の負けだな。
と、肩を落とし始めたその時。
「あ、あの、、」
後ろから、透き通る様な声が聞こえてきた。
俺は、すぐに振り向いた。
やっぱり彼女だ。
戻ってきた。
勝った。
でも、俺の前に立つ彼女は、ショーの時に見せた雰囲気とも違う。
さっき俺から立ち去る時に見せた妖艶な笑顔もなかった。
むしろ、話したくないって顔だ。
「ハ、ハンカチ、、」
そして、消えそうな声で話し出す。
俺には、ありのままの顔を見せてくれないのか?
ついつい、いろんな顔を見たくて意地悪してしまいたくなった。
俺が差し出したハンカチを受け取ろうとした瞬間にヒョイっと上にあげた。
何でこんな事してんだよ。
小学生でもしないだろ。