運命とか勘弁してほしい！
「あっ……琴葉……」

あたしと目が合うと、彰くんは嬉しそうな顔になる。まるで飼い主を見つけた迷子の子犬みたいだ。その様子にクスッと笑いつつ、友達に断って彼の元へと向かう。

「どうしたの？」

「ごめん。数学の教科書を寮に忘れてきたみたいで……。貸してくれないかな？」

彰くんの目には不安が浮かんでいるように見えた。そんな顔しなくても、教科書くらい貸すのに……。入学式の時にあたしを脅してきたのは別人だったのだろうかと思ってしまう。

「全然貸すよ。ロッカーから取ってくるから待ってて」

「ありがとう……！」

あたしと彰くんのやり取りを香奈が見ていたなんて、全く気が付かなかった。



今日の放課後はミステリー研究部の活動日だ。ホームルームが終わった後、あたしはグッと背伸びをして通学用鞄を手に部室へ向かおうとした。その時。

「美澄、ちょっといいか」

担任の先生に声をかけられ、あたしは足を止める。先生は「ごめんな。ちょっと委員会のことで……」と申し訳なさそうに眉を下げる。
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