運命とか勘弁してほしい!
「じゃあな」

草太くんはそう言い、あたしの手を引いて部室を出て行く。廊下をズンズンと歩いて行く彼に、あたしは慌てて「ちょっとちょっと!」と声をかける。

「映画に行くって本気?」

「本気だ。いつもあの二人もくっ付いてきてデートの一つしたことがないんだ。今日くらいいいだろ?」

デートってあたしは草太くんと付き合ってるわけじゃないんですけど。そう言いたかったけど、そう言ったら彼の目からハイライトが消えるのがわかっているためそのまま歩き続ける。

学校を出て駅前にある映画館の前に着いた時、香奈の手から脱出したのか栞くんと彰くんが駆け付け、少し草太くんは不機嫌になってしまった。そんな彼を宥め、四人で映画を楽しんだ。とても楽しかったなぁ。



それから数週間、あたしはいつも通りに過ごしている。香奈は栞くんたちに媚びているものの、無視されるのを何度か見た。気になって三人に訊ねたことがある。

「和島さんからめちゃくちゃアプローチされてるじゃん。可愛いし、ときめいたりしないの?」
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