私は甘すぎる溺愛から逃れる方法を知らない
「でも、これで玲乃と過ごせる時間が少し増えたね。さ、まずは映画を見ようか」

映画のチケットは亮弥さんが予約してくれていたので、私達はすぐに映画館に入れた。

映画が始まる直前、亮弥さんが急に私の手を握った。

「っ!何して……!」

「しっー……」

そうだった。ここは映画館で、もう映画が始まる。

私は抗議することも出来ないまま、そのまま映画を見始める。

幸い10分位で手を離してくれたが、しばらく映画に集中出来なかった。

映画が終わると、私は亮弥さんを問い詰めた。

「亮弥さんの馬鹿っ!始めの方、映画に集中出来なかったんですよ!?」

「ごめんね、あまりに玲乃が可愛くてつい触れたくなった」

「っ!甘い言葉で誤魔化さないで下さい!」

「本当に嬉しいんだよ。やっと玲乃に触れることが出来る」

「……?」

「やっと」という言葉が、あまりに昔からの願いのように聞こえて、私は少しだけ不思議に思った。
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