気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
 口内を蹂躙されるのと同時に服を取り払われ、気付けば素肌をさらけ出していた。
 颯斗の手と唇が、咲良の身体の隅々まで触れ熱を高めていく。
 彼に貫かれるとき、咲良は自分の体を制御できない程、溶かされていた。
「あっ、あんっ!」
 抑えられずに上げる声が、颯斗をますます昂らせるのか、行為に終わりが見えてこない。
 咲良はただ快感だけを享受していた。
 自分はセックスに淡泊な方かと思っていたが、颯斗によってただの思い込みだったのだと思い知らされた。
 溺れてしまいもう戻れない。散々抱かれて眠りに落ちるとき、そんな風に思ったのだった。

 夢のような一夜が終わり、迎えた朝。
 目を覚ました咲良は、いつもと違う天井に一瞬戸惑ったものの、すぐに状況を思い出して周囲に視線を走らせた。
 時刻は午前五時。
 颯斗の姿は見当たらない。隣で寝ていたはずだけれどシーツに温もりは感じない。
「起きてリビングに行ったのかな……」
 彼について考えると昨夜の自分の痴態が蘇り、うわあと叫び両手で顔を覆いたくなった。
 散々盛り上がった行為の最中、咲良はもっとと何度も強請ったし、彼の求めに積極的に応じた。
(あんなに大胆なことをしてしまうなんて……)
 素直になるのはいいことだが、あけすけにいろいろ言い過ぎた。
 媚薬に冒されたような蜜夜に浸かっているときは当たり前と感じたことが、爽やかな朝陽の中ではこれでもかと言うくらいに恥ずかしい。
 多分一夜の関係は、夜の内に別れるのが正しいのだろう。
(だってどんな顔して渡会さんの前に出ればいいの?)
 自然に接する自信がない。絶対に意識し過ぎて失敗する。
 とは言え、いつまでもじっとしている訳にもいかず、ベッドから出てソファに放ってあった大き目のバスローブを羽織る。
(服はどこに置いたんだっけ)
 颯斗と抱き合い、途中でシャワーを浴びに行ったときは、既に何も身に着けていなかった。その辺に脱ぎ捨ててしまったのだろう。
 つくづく昨夜の自分の行動は勢いだけで突き進んでいた。
 咲良は静かに扉の前に立ち、緊張しながらゆっくり扉を開いた。
 続きのリビングルームに颯斗がいると思っていたのだ。
 ところが部屋の中に人の気配は感じられなかった。
 中央の大きなソファにも、窓際のダイニングテーブルにも彼の姿はない。
「……渡会さん?」
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