気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
二章


二章 再会

 咲良が一夜の恋と失恋を経験したあの夜から、二ヶ月が過ぎた。
 春から初夏に季節は移り変わり、金洞商会秘書室は、月末に迫った株主総会の準備で慌ただしい。
 毎年変わらない忙しない時期だが、咲良にとっては辛く苦しい時間でもあった。
 失恋して初めの一週間は颯斗と過ごした夢のようなひと時を頻繁に思い出してばかりいた。
 連絡先の交換をしていないのに、何らかの手段で咲良の情報を調べた彼から電話がかかってくるかもしれない。そんなバカみたいな期待をしたり、忘れるという決意とは真逆な行動ばかりしていたのだ。
 さすがに十日もすると我に返り、余計な期待をするのをきっぱり辞めた。
 とは言え、まったくなかったことに出来る程割り切るのは難しく、出会いの場である霽月に立ち寄ることが出来なかった。
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