気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
もしまたそこで居合わせたら、今度こそ彼を忘れられなうなりそうだったから。
それでも最近はようやく平常心を取り戻せたと感じている。
昨夜は久々に霽月に顔を出した。
快く迎えてくれたマスターには仕事が忙しかったと説明し、また通うと言うと喜んで貰えた。
偶然颯斗がやって来るなんてことはなかったし、マスターも彼の話題を口にしなかった。
咲良は美味しいお酒と料理で以前と変わらない穏やな時間を過ごし、リフレッシュして家路についた。そしてこれからも仕事中心の変わらない日が続くのだと確信したのだった。
ところがその翌日。いつも通りの時間に出社した咲良は、人事部長に応接室に呼ばれ想像すらしなかった言葉を告げられた。
「社外秘データが入ったUSBメモリーが紛失した。現在調査中だが駒井さんが持ち出した疑いがかかっている」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
「え……待ってください。違います。私はデータを持ち出したことなんて一度もありません」
咲良が入社した頃から、仕事を持ち帰ることは禁止されている。もちろんそのルールは守って来た。
そもそもなぜ咲良に疑いがかかっているのだろうか。
動揺する咲良に人事部長は同情めいた視線を送る。
「我々も駒井さんが規則を破るとは思っていないんだ。ただ金洞副社長が証言しているんだ」
「副社長が?」
咲良は驚きのあまり目を見開いた。
(……どうしてそんな嘘を?)
以前から暴言や失言は多かったが、人を陥れるようなことまでは言う人ではなかった。恐らく本気で咲良が犯人だと思っている。
そう思い込むような何かが有ったのだろうか。
「あの、直接副社長と話をさせていただけないでしょうか? なぜ私が情報を持ち出したと判断したのか確認させてください」
「それは構わないが」
人事部長が戸惑いながらも頷こうとしたそのとき、応接室の扉が開いた。
「金洞副社長」
険しい表情の金洞副社長の登場に、室内の緊張感が増す。
彼は咲良をぎろりと睨むと、荒い足音を立てて近づき見下ろして来た。
「駒井君、言い訳は見苦しいぞ!」
副社長は常に横柄な態度だが、今朝はいつにも増して攻撃的だ。
咲良に対して激しい怒りを抱いているのが伝わって来る。
「副社長、情報漏洩の件でしたら誤解です。説明させてください。私はUSBメモリーを使用したことは……」
それでも最近はようやく平常心を取り戻せたと感じている。
昨夜は久々に霽月に顔を出した。
快く迎えてくれたマスターには仕事が忙しかったと説明し、また通うと言うと喜んで貰えた。
偶然颯斗がやって来るなんてことはなかったし、マスターも彼の話題を口にしなかった。
咲良は美味しいお酒と料理で以前と変わらない穏やな時間を過ごし、リフレッシュして家路についた。そしてこれからも仕事中心の変わらない日が続くのだと確信したのだった。
ところがその翌日。いつも通りの時間に出社した咲良は、人事部長に応接室に呼ばれ想像すらしなかった言葉を告げられた。
「社外秘データが入ったUSBメモリーが紛失した。現在調査中だが駒井さんが持ち出した疑いがかかっている」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
「え……待ってください。違います。私はデータを持ち出したことなんて一度もありません」
咲良が入社した頃から、仕事を持ち帰ることは禁止されている。もちろんそのルールは守って来た。
そもそもなぜ咲良に疑いがかかっているのだろうか。
動揺する咲良に人事部長は同情めいた視線を送る。
「我々も駒井さんが規則を破るとは思っていないんだ。ただ金洞副社長が証言しているんだ」
「副社長が?」
咲良は驚きのあまり目を見開いた。
(……どうしてそんな嘘を?)
以前から暴言や失言は多かったが、人を陥れるようなことまでは言う人ではなかった。恐らく本気で咲良が犯人だと思っている。
そう思い込むような何かが有ったのだろうか。
「あの、直接副社長と話をさせていただけないでしょうか? なぜ私が情報を持ち出したと判断したのか確認させてください」
「それは構わないが」
人事部長が戸惑いながらも頷こうとしたそのとき、応接室の扉が開いた。
「金洞副社長」
険しい表情の金洞副社長の登場に、室内の緊張感が増す。
彼は咲良をぎろりと睨むと、荒い足音を立てて近づき見下ろして来た。
「駒井君、言い訳は見苦しいぞ!」
副社長は常に横柄な態度だが、今朝はいつにも増して攻撃的だ。
咲良に対して激しい怒りを抱いているのが伝わって来る。
「副社長、情報漏洩の件でしたら誤解です。説明させてください。私はUSBメモリーを使用したことは……」