気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
焦りを感じながらも必死に言い募る。けれど最後まで言わせて貰えず、副社長の怒鳴り声で遮られる。
「うるさい! 私はこの目で見たんだ! 一昨日に駒井君が顧客情報をUSBに移して、昨日持ち出したのを!」
顔を真っ赤にして咲良を責める副社長の姿には既視感が有った。
ヒステリックになるのは自分の失敗を認めたくないとき。
(まさか……)
咲良は血の気が引くのを感じた。
(情報を持ち出したのは副社長自身。それを私のせいにして責任逃れをしようとしているの?)
膝の上に置いた手が震える。
浮かんだ疑惑は間違いないと感じる。
(だって本人じゃなければ、情報をいつ持ち出したなんて分かる訳がない)
咲良は正面の椅子に座る人事部長に目を向けた。無表情だが咲良と目を合わせようとしない。
恐らく彼も咲良と同じことに気付いているのだ。けれど相手が副社長の為口に出来ない。
金洞商会は昔ながらの世襲制だ。
副社長は創業者の直系で、血筋だけなら傍系の社長よりも上ということもあり、社内で絶大な権力を握っている。
咲良のような一般社員はもちろん、部長程度でも副社長に太刀打ちできない。
だからと言って、濡れ衣を着せられているのに、黙ってはいられない。
「私のパソコンを調べてUSBの接続履歴を確認してください」
履歴は人と違って副社長に忖度しない。
咲良が無実だと証明してくれるはず。
しかし咲良の言葉に副社長があからさな反応を見せた。
「履歴だと? そんなこと出来るはずないだろう!」
「システム担当者なら可能だと思います」
副社長はショックを受けたように、唇を噛み締める。咲良を憎々し気に睨むと、踵を返し応接室を出て行った。
バタンとドアが閉まると、室内は気まずい空気に満たされる。
「駒井君、正直に言うと私は君が犯人だと信じてはいない」
「はい。本当に私ではないんです。どうか平等に調査をしてください」
「もちろん調査は続ける。しかし副社長の証言がある以上、USBの接続履歴が無いと証明されても、現状は維持できない」
「どういう意味でしょうか?」
「……金洞副社長が駒井君を情報漏洩の罪で解雇すると言っている」
咲良はひゅっと息を呑んだ。
「解雇? そんな……」
「うるさい! 私はこの目で見たんだ! 一昨日に駒井君が顧客情報をUSBに移して、昨日持ち出したのを!」
顔を真っ赤にして咲良を責める副社長の姿には既視感が有った。
ヒステリックになるのは自分の失敗を認めたくないとき。
(まさか……)
咲良は血の気が引くのを感じた。
(情報を持ち出したのは副社長自身。それを私のせいにして責任逃れをしようとしているの?)
膝の上に置いた手が震える。
浮かんだ疑惑は間違いないと感じる。
(だって本人じゃなければ、情報をいつ持ち出したなんて分かる訳がない)
咲良は正面の椅子に座る人事部長に目を向けた。無表情だが咲良と目を合わせようとしない。
恐らく彼も咲良と同じことに気付いているのだ。けれど相手が副社長の為口に出来ない。
金洞商会は昔ながらの世襲制だ。
副社長は創業者の直系で、血筋だけなら傍系の社長よりも上ということもあり、社内で絶大な権力を握っている。
咲良のような一般社員はもちろん、部長程度でも副社長に太刀打ちできない。
だからと言って、濡れ衣を着せられているのに、黙ってはいられない。
「私のパソコンを調べてUSBの接続履歴を確認してください」
履歴は人と違って副社長に忖度しない。
咲良が無実だと証明してくれるはず。
しかし咲良の言葉に副社長があからさな反応を見せた。
「履歴だと? そんなこと出来るはずないだろう!」
「システム担当者なら可能だと思います」
副社長はショックを受けたように、唇を噛み締める。咲良を憎々し気に睨むと、踵を返し応接室を出て行った。
バタンとドアが閉まると、室内は気まずい空気に満たされる。
「駒井君、正直に言うと私は君が犯人だと信じてはいない」
「はい。本当に私ではないんです。どうか平等に調査をしてください」
「もちろん調査は続ける。しかし副社長の証言がある以上、USBの接続履歴が無いと証明されても、現状は維持できない」
「どういう意味でしょうか?」
「……金洞副社長が駒井君を情報漏洩の罪で解雇すると言っている」
咲良はひゅっと息を呑んだ。
「解雇? そんな……」