気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「はい。悩んだんですけど、退職して新しい気持ちで頑張ろうと決めました」
「……納得出来ないな。ルール違反をしてUSBを紛失したのは絶対に咲良ちゃんじゃないのに。尽くして来た社員を疑うなんてうちの会社はどうかしてる」
美貴は今回の経緯を知っていて、自分のことのように憤慨してくれている。
副社長に直接抗議に行くとまで言ってくれた。
そんなことをしたら美貴まで立場が悪くなるのが目に見えたので、咲良が必死に止めたのだけれど。
「そう言って貰えて少し気が楽になりました」
「だって咲良ちゃんを見てたら、あり得ないことだって分かるもの……ねえ、ほんつに何もしなくていいの? 会社を訴えることも出来るはずよ?」
「いいんです。そこまでして会社に残っても、居心地がいい訳ないですから」
「そう……何も力に慣れなくて本当にごめんなさい」
「謝らないでください。美貴さんは何も悪くないんですから」
頭を下げる美貴を、咲良は慌ててとめる。
「でも」
「私なら大丈夫です。今日会社を辞めるって言ったらすっきりしたんです」
金洞商会から受けた仕打ちはこの先も許せないかもしれないけれど、一矢報いるために何かをするなら、その時間を前向きに使った方がいい。
「副社長とはもう話し合いはしないの?」
「はい。退職については室長から報告してくれるそうです」
きっと今頃喜んでいるだろう。彼にとって咲良は今一番邪魔な存在だろうから。
「辞めた後はどうするか、決めているの?」
「秘書の仕事を続けるつもりです。やっぱり私は誰かのフォロー役が合っていると思うので。ただ具体的には何も決まってなくて。最悪の場合失業保険を貰いながら就職活動をすることになるかもしれないです」
「そう……」
美貴はまだ納得が出来ないようで、顔を曇らせる。
けれど注文していた日替わりランチが届いたため、深刻な会話は一旦中断になった。
食事を終えると美貴が温かい紅茶のカップを両手で包むようにしながらがら、寂しそうな表情を浮かべた。
「咲良ちゃんがいなくなると寂しくなるわ。こうして食事をすることもなくなっちゃうのね」
心から名残惜しんでいる様子の美貴に、咲良は金洞商会に見切りを付けてから初めて寂しと感じた。
「私も美貴さんと離れることは残念です。多くのことを教えて貰って、いつも頼りにしていました」
「……納得出来ないな。ルール違反をしてUSBを紛失したのは絶対に咲良ちゃんじゃないのに。尽くして来た社員を疑うなんてうちの会社はどうかしてる」
美貴は今回の経緯を知っていて、自分のことのように憤慨してくれている。
副社長に直接抗議に行くとまで言ってくれた。
そんなことをしたら美貴まで立場が悪くなるのが目に見えたので、咲良が必死に止めたのだけれど。
「そう言って貰えて少し気が楽になりました」
「だって咲良ちゃんを見てたら、あり得ないことだって分かるもの……ねえ、ほんつに何もしなくていいの? 会社を訴えることも出来るはずよ?」
「いいんです。そこまでして会社に残っても、居心地がいい訳ないですから」
「そう……何も力に慣れなくて本当にごめんなさい」
「謝らないでください。美貴さんは何も悪くないんですから」
頭を下げる美貴を、咲良は慌ててとめる。
「でも」
「私なら大丈夫です。今日会社を辞めるって言ったらすっきりしたんです」
金洞商会から受けた仕打ちはこの先も許せないかもしれないけれど、一矢報いるために何かをするなら、その時間を前向きに使った方がいい。
「副社長とはもう話し合いはしないの?」
「はい。退職については室長から報告してくれるそうです」
きっと今頃喜んでいるだろう。彼にとって咲良は今一番邪魔な存在だろうから。
「辞めた後はどうするか、決めているの?」
「秘書の仕事を続けるつもりです。やっぱり私は誰かのフォロー役が合っていると思うので。ただ具体的には何も決まってなくて。最悪の場合失業保険を貰いながら就職活動をすることになるかもしれないです」
「そう……」
美貴はまだ納得が出来ないようで、顔を曇らせる。
けれど注文していた日替わりランチが届いたため、深刻な会話は一旦中断になった。
食事を終えると美貴が温かい紅茶のカップを両手で包むようにしながらがら、寂しそうな表情を浮かべた。
「咲良ちゃんがいなくなると寂しくなるわ。こうして食事をすることもなくなっちゃうのね」
心から名残惜しんでいる様子の美貴に、咲良は金洞商会に見切りを付けてから初めて寂しと感じた。
「私も美貴さんと離れることは残念です。多くのことを教えて貰って、いつも頼りにしていました」