気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
そのとき、隣の椅子に誰かが座る気配を感じた。
他にも席が空いているのにわざわざ隣に座るということは、咲良に声をかけようとしている可能性が高い。常連同士で盛り上がるのは珍しいことではないけれど、今日は一人でまったり過ごしたいため少し困りながら隣に目を向けた。
「……えっ?」
咲良は驚きのあまり目を丸くした。
「久し振り」
そこに居たのは、端整な顔に微笑を浮かべた隼人だったから。
(な、なんで彼が? いや、常連だって言ってたし居てもおかしくないんだけど)
ただ、同じ日、時間に居合わせる確率はかなり低い。もう一度彼に会いたいと偶然を期待していた頃は、一度も会えなかったのだ。
それなのに意識しなくなった途端にこんなに簡単に再会してしまうなんて。
咲良にとって不意打で動揺を隠せない。きっと間抜けな顔になっているだろう。
その証拠に、颯斗は咲良の表情を見てくすりと笑った。
「ごめん、驚かせちゃったみたいだな」
「あ……は、はい。ぼんやりしていたのもあって」
なんとか冷静さを取り戻し、こほんと咳払いをして誤魔化した。
颯斗は当たり前のように咲良の隣に座る。
(声をかけただけじゃなくて、ここにいるのかな? ……少し気まずい)
あのときのような勢いや盛り上がりは既になく、かと言って顔見知りだと自然に振舞うのも難しい。
彼は全く意識していないようで、動揺は微塵も見えないけれど。
(普段から、一度きりの関係を持ったりしてるのかな)
軽薄なタイプには見えないが、慣れていたのは間違いないし、誘いも多そうだ。
いつの間にオーダーしていたのか、颯斗の前にグラスが置かれる。彼はそれを手に取ると、咲良に魅惑的な微笑みを向けた。
「あれから元気にしてた?」
「え、ええ……渡会さんは?」
気の聞いた言葉どころか、ただの質問返しになってしまった。
「俺は、君にもう一度会いたいと思ってた」
「えっ?」
驚く咲良に、颯斗は少しだけ顔を近づけて来た。
「今夜、こうして再会出来たのは幸運だ」
表情も声も、醸し出す雰囲気もなにかもが男の色気に溢れていて、いちいち魅力的だ。平静を装うのに苦労する。
けれど彼の言葉を本気にした訳じゃない。ただのリップサービスなことくらい分かってる。
他にも席が空いているのにわざわざ隣に座るということは、咲良に声をかけようとしている可能性が高い。常連同士で盛り上がるのは珍しいことではないけれど、今日は一人でまったり過ごしたいため少し困りながら隣に目を向けた。
「……えっ?」
咲良は驚きのあまり目を丸くした。
「久し振り」
そこに居たのは、端整な顔に微笑を浮かべた隼人だったから。
(な、なんで彼が? いや、常連だって言ってたし居てもおかしくないんだけど)
ただ、同じ日、時間に居合わせる確率はかなり低い。もう一度彼に会いたいと偶然を期待していた頃は、一度も会えなかったのだ。
それなのに意識しなくなった途端にこんなに簡単に再会してしまうなんて。
咲良にとって不意打で動揺を隠せない。きっと間抜けな顔になっているだろう。
その証拠に、颯斗は咲良の表情を見てくすりと笑った。
「ごめん、驚かせちゃったみたいだな」
「あ……は、はい。ぼんやりしていたのもあって」
なんとか冷静さを取り戻し、こほんと咳払いをして誤魔化した。
颯斗は当たり前のように咲良の隣に座る。
(声をかけただけじゃなくて、ここにいるのかな? ……少し気まずい)
あのときのような勢いや盛り上がりは既になく、かと言って顔見知りだと自然に振舞うのも難しい。
彼は全く意識していないようで、動揺は微塵も見えないけれど。
(普段から、一度きりの関係を持ったりしてるのかな)
軽薄なタイプには見えないが、慣れていたのは間違いないし、誘いも多そうだ。
いつの間にオーダーしていたのか、颯斗の前にグラスが置かれる。彼はそれを手に取ると、咲良に魅惑的な微笑みを向けた。
「あれから元気にしてた?」
「え、ええ……渡会さんは?」
気の聞いた言葉どころか、ただの質問返しになってしまった。
「俺は、君にもう一度会いたいと思ってた」
「えっ?」
驚く咲良に、颯斗は少しだけ顔を近づけて来た。
「今夜、こうして再会出来たのは幸運だ」
表情も声も、醸し出す雰囲気もなにかもが男の色気に溢れていて、いちいち魅力的だ。平静を装うのに苦労する。
けれど彼の言葉を本気にした訳じゃない。ただのリップサービスなことくらい分かってる。