気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
その証拠に颯斗は咲良が返事をしなくても、まったく気にした様子がない。相変わらず魅力的な眼差しで咲良を見つめながら、ガラリと話題を変えてきた。
「駒井さんは、金洞商会の副社長秘書だったんだな」
「どうしてそれを?」
「不快に思われるかもしれないが、君のことを調べたんだ」
「調べた?」
咲良は動揺して目を瞬く。彼が咲良を調べる理由がまるで分からない。
「さっきも言ったが君にもう一度会いたかったからだ。君の連絡先を知らないから、調べるしかなかったんだ」
「会いたかったって、なんの用でですか?」
「駒井さんに頼みたいことがあるんだ」
咲良は戸惑いながら、手にしていたグラスをカウンターに置いた。
「頼みってなんですか?」
考えても何も思いつかない。なぜなら咲良は颯斗のことをほとんど何も知らないからだ。
「込み入った話になるから、席を変えてもいいか?」
颯斗の目線が店の奥のカウンター席に向けられる。マスターの視界からも遠くなり、他の客との距離も空く。カウンター席よりもずっとふたりの世界に閉じ込められた感覚に陥りそうだ。
僅かに躊躇ったものの咲良は頷き、颯斗と共に移動する。
颯斗はレディーファーストが身についているのか、自然な振舞いで咲良を先に座らせ、自分もその隣に腰を下ろす。
思ったよりも彼との距離が近い。
決して嫌な感じではない緊張感が漂う。そんな空気感には気付かないふりをして咲良はソファーの背もたれに寄りかかった。
「私、ボックス席って初めてです。このソファ思ったよりもフワフワですね」
やけに明るい声になったのは、緊張を誤魔化すため。
「そう言えば、俺も初めてだな。ここには大抵一人で来るからカウンター専門だ」
「先日は連れが居ましたよね?」
「世話をしている部下だって言っただろ? 仕事の帰りに流れで飲むことになっただけだ」
「そうでした」
ついプライベートな質問をしてしまったと気まずくなった。
会話が途絶え沈黙になる。間を持たせるために届いたドリンクを口に運んだ。
「あの、頼み事と言うのは?」
「ああ、前置き無しに言う。俺と結婚してくれないか?」
「……え?」
咲良は思わずポカンと口を開いてしまった。
(えっ、渡会さんと私が結婚? ……いやまさか、ありえないよね?)
「駒井さんは、金洞商会の副社長秘書だったんだな」
「どうしてそれを?」
「不快に思われるかもしれないが、君のことを調べたんだ」
「調べた?」
咲良は動揺して目を瞬く。彼が咲良を調べる理由がまるで分からない。
「さっきも言ったが君にもう一度会いたかったからだ。君の連絡先を知らないから、調べるしかなかったんだ」
「会いたかったって、なんの用でですか?」
「駒井さんに頼みたいことがあるんだ」
咲良は戸惑いながら、手にしていたグラスをカウンターに置いた。
「頼みってなんですか?」
考えても何も思いつかない。なぜなら咲良は颯斗のことをほとんど何も知らないからだ。
「込み入った話になるから、席を変えてもいいか?」
颯斗の目線が店の奥のカウンター席に向けられる。マスターの視界からも遠くなり、他の客との距離も空く。カウンター席よりもずっとふたりの世界に閉じ込められた感覚に陥りそうだ。
僅かに躊躇ったものの咲良は頷き、颯斗と共に移動する。
颯斗はレディーファーストが身についているのか、自然な振舞いで咲良を先に座らせ、自分もその隣に腰を下ろす。
思ったよりも彼との距離が近い。
決して嫌な感じではない緊張感が漂う。そんな空気感には気付かないふりをして咲良はソファーの背もたれに寄りかかった。
「私、ボックス席って初めてです。このソファ思ったよりもフワフワですね」
やけに明るい声になったのは、緊張を誤魔化すため。
「そう言えば、俺も初めてだな。ここには大抵一人で来るからカウンター専門だ」
「先日は連れが居ましたよね?」
「世話をしている部下だって言っただろ? 仕事の帰りに流れで飲むことになっただけだ」
「そうでした」
ついプライベートな質問をしてしまったと気まずくなった。
会話が途絶え沈黙になる。間を持たせるために届いたドリンクを口に運んだ。
「あの、頼み事と言うのは?」
「ああ、前置き無しに言う。俺と結婚してくれないか?」
「……え?」
咲良は思わずポカンと口を開いてしまった。
(えっ、渡会さんと私が結婚? ……いやまさか、ありえないよね?)