気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
だって一体どうしたらそんな話になるというのか。訳が分からなくて咲良は眉を顰める。
「いわゆる契約結婚だ」
「契約結婚?」
続いた言葉に更に驚愕した咲良に、颯斗は一瞬困ったような表情になったが、すぐに自信あり気な笑みになる。
「信じられないかもしれないが、真剣な相談だ。なぜ君にこんな話を持ち掛けたのか理由を話すから聞いて欲しい」
話の内容はとんでもないのに、彼の口調は穏やかで落ち着いていたからか、言われるがままに頷いてしまった。
「仕事と家の事情で急ぎ結婚する必要があるんだ。相手を探していたときに、駒井さんと出会い、君がいいと思った」
「……どうして私なんですか? 契約結婚が必要だとしても、他にもっと相応しい人がいるんじゃないですか?」
それこそ初対面のときに連れていた女性の方がよさそうだ。ただの部下だと言っていたが、親しそうな雰囲気だったし、傍から見たら咲良よりも余程お似合いだと思う。
けれど彼は心外だとでも言うように、首を横に振る。
「必要に迫られたからと言って、誰でもいい訳じゃない。妻として大切にできる女性でなければ相手に対しても失礼だろう?」
「そ、それはそうですけど、その相手がどうして私なのかが分からなくて……だって会うの今日で二度目ですよね」
人生の一大事である結婚を決めるには、あまりにふたりで過ごした時間が足りない。
颯斗は珍しく口ごもったが、一呼吸おいてから答えを口にする。
「理由が気になるのなら、勘のようなものだと言っておく。俺は自分の勘に自信をもっていて、それに何度も助けられて来た。大事なところで当たるんだ。君を妻に出来たら俺は必ず成功すると確信している」
そう言って微笑む颯斗の表情に一切の迷いは見られなかった。
(でも結婚を勘で決めるなんて……)
説明を受けても信じられない。一方で起業して大成功した経験を持つ彼の勘は特別なもののような気がする。
でも咲良にはそのような勘なんてないから、理解出来ない。
それに恋していた彼に結婚相手として望まれたというのに、手放しで喜べないのはなぜだろうか。
咲良は颯斗から視線を逸らし、自分の手元に移す。
(もやもやするのは、彼に愛されてプロポーズされた訳じゃないからだよね)
颯斗は結婚する必要があり、相手を直感で選んだという。彼は真剣なのだろう。
「いわゆる契約結婚だ」
「契約結婚?」
続いた言葉に更に驚愕した咲良に、颯斗は一瞬困ったような表情になったが、すぐに自信あり気な笑みになる。
「信じられないかもしれないが、真剣な相談だ。なぜ君にこんな話を持ち掛けたのか理由を話すから聞いて欲しい」
話の内容はとんでもないのに、彼の口調は穏やかで落ち着いていたからか、言われるがままに頷いてしまった。
「仕事と家の事情で急ぎ結婚する必要があるんだ。相手を探していたときに、駒井さんと出会い、君がいいと思った」
「……どうして私なんですか? 契約結婚が必要だとしても、他にもっと相応しい人がいるんじゃないですか?」
それこそ初対面のときに連れていた女性の方がよさそうだ。ただの部下だと言っていたが、親しそうな雰囲気だったし、傍から見たら咲良よりも余程お似合いだと思う。
けれど彼は心外だとでも言うように、首を横に振る。
「必要に迫られたからと言って、誰でもいい訳じゃない。妻として大切にできる女性でなければ相手に対しても失礼だろう?」
「そ、それはそうですけど、その相手がどうして私なのかが分からなくて……だって会うの今日で二度目ですよね」
人生の一大事である結婚を決めるには、あまりにふたりで過ごした時間が足りない。
颯斗は珍しく口ごもったが、一呼吸おいてから答えを口にする。
「理由が気になるのなら、勘のようなものだと言っておく。俺は自分の勘に自信をもっていて、それに何度も助けられて来た。大事なところで当たるんだ。君を妻に出来たら俺は必ず成功すると確信している」
そう言って微笑む颯斗の表情に一切の迷いは見られなかった。
(でも結婚を勘で決めるなんて……)
説明を受けても信じられない。一方で起業して大成功した経験を持つ彼の勘は特別なもののような気がする。
でも咲良にはそのような勘なんてないから、理解出来ない。
それに恋していた彼に結婚相手として望まれたというのに、手放しで喜べないのはなぜだろうか。
咲良は颯斗から視線を逸らし、自分の手元に移す。
(もやもやするのは、彼に愛されてプロポーズされた訳じゃないからだよね)
颯斗は結婚する必要があり、相手を直感で選んだという。彼は真剣なのだろう。