気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
これまで彼は咲良の前職について殆ど触れなかったし、就職に際してリファレンスチェックもしなかった。
けれど、問題が有ったと察していたのだ。
咲良は目を伏せた。
本来なら就職の前に伝えなくてはならなかったことだ。けれど、なかなか言い出せずに、彼からも聞かれないのをいいことに今日まで来てしまった。
今でも出来るなら知られたくない。けれどいつまでも逃げてはいられない。
覚悟を決めて、颯斗を見つめた。
彼は咲良を信じてくれるのだろうか。
「解雇同然で退職しました。情報漏洩の疑いをかけられて、それ以上会社に居られなくなったんです」
颯斗が大きく目を見開いた。咲良は慌てて続きを口にする。
「でも冤罪なんです。私は本当にそんなことはしていないんです」
衝撃が大きかったのか颯斗は唖然としているように見えた。
けれど次の瞬間、顔をしかめる。
「冤罪? どういうことだ?」
彼の声に怒りを感じた。咲良は戸惑いながら、退職までの事情と就職活動を妨害された経緯を説明した。
颯斗は黙って咲良の言葉に耳を傾けていたが、話が終わると小さく息を吐いた。
それからどこか悲しそうな目で咲良を見る。
「辛かったな」
「はい……信じてくれるんですか?」
「当たり前だろう? 咲良は俺の妻だ。どんなときでも味方だし、力になる。だから次に何か有った時は隠さず相談して欲しい」
「……はい」
じわりと胸に喜びが広がる。無条件で信じ味方でいると言ってくれたことが、傷ついた咲良の心を癒してくれるようだった。
「颯斗さん、ありがとうございます。信じてくれて本当に嬉しい」
彼と結婚してよかった。
たとえ女性として愛されていなくても。
ふたりの間に穏やかな空気が流れる。
「今後の予定だけど」
しばらくすると、颯斗がふと思い出したように切り出した。
「週末実家に結婚報告に行く。咲良にも同行して欲しい」
「もちろんです」
「その日は兄もいるんだ。咲良を紹介したい」
颯斗の両親とは結婚前の挨拶で一度だけ会っている。ただ彼の兄とは都合が合わずにまた顔を合わせていない。
「はい。お会いするのが楽しみです」
颯斗の兄はどんな人なのだろう。兄弟だから似ているのだろうか。
「それからまだ日程は決まってないが、俺の幼馴染を紹介したい」
「幼馴染?」
けれど、問題が有ったと察していたのだ。
咲良は目を伏せた。
本来なら就職の前に伝えなくてはならなかったことだ。けれど、なかなか言い出せずに、彼からも聞かれないのをいいことに今日まで来てしまった。
今でも出来るなら知られたくない。けれどいつまでも逃げてはいられない。
覚悟を決めて、颯斗を見つめた。
彼は咲良を信じてくれるのだろうか。
「解雇同然で退職しました。情報漏洩の疑いをかけられて、それ以上会社に居られなくなったんです」
颯斗が大きく目を見開いた。咲良は慌てて続きを口にする。
「でも冤罪なんです。私は本当にそんなことはしていないんです」
衝撃が大きかったのか颯斗は唖然としているように見えた。
けれど次の瞬間、顔をしかめる。
「冤罪? どういうことだ?」
彼の声に怒りを感じた。咲良は戸惑いながら、退職までの事情と就職活動を妨害された経緯を説明した。
颯斗は黙って咲良の言葉に耳を傾けていたが、話が終わると小さく息を吐いた。
それからどこか悲しそうな目で咲良を見る。
「辛かったな」
「はい……信じてくれるんですか?」
「当たり前だろう? 咲良は俺の妻だ。どんなときでも味方だし、力になる。だから次に何か有った時は隠さず相談して欲しい」
「……はい」
じわりと胸に喜びが広がる。無条件で信じ味方でいると言ってくれたことが、傷ついた咲良の心を癒してくれるようだった。
「颯斗さん、ありがとうございます。信じてくれて本当に嬉しい」
彼と結婚してよかった。
たとえ女性として愛されていなくても。
ふたりの間に穏やかな空気が流れる。
「今後の予定だけど」
しばらくすると、颯斗がふと思い出したように切り出した。
「週末実家に結婚報告に行く。咲良にも同行して欲しい」
「もちろんです」
「その日は兄もいるんだ。咲良を紹介したい」
颯斗の両親とは結婚前の挨拶で一度だけ会っている。ただ彼の兄とは都合が合わずにまた顔を合わせていない。
「はい。お会いするのが楽しみです」
颯斗の兄はどんな人なのだろう。兄弟だから似ているのだろうか。
「それからまだ日程は決まってないが、俺の幼馴染を紹介したい」
「幼馴染?」