気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
颯斗と見つめ合い笑い合う。ふたりの距離が今までで一番近付いた気がした。
新居の寝室は夫婦同室で、セミダブルのベッドが二台、隙間を空けて並んでいる、新婚夫婦としてはよく見かけるインテリアだ。
けれど咲良と颯斗は同居しても婚姻届け出してからも、同室で眠りながら体の関係を持つことはなく過ごしていた。
契約には子供についての取り決めがない。颯斗も咲良もそのことについて話題に出さなかった。お互い出方を窺っていたのだと思う。
けれど今夜は婚姻届けを出した記念の夜だ。
(もし颯斗さんに誘われたらどうすればいいんだろう)
結婚した以上、夫婦生活を拒否するつもりはない。
しかも既に一度肌を重ねているのだ。
とはいえ、自分からその件について触れる勇気はない。
だから咲良は、寝室ではいつも緊張感を持っている。
意識し過ぎない方がいいと分かっているのに、どうしても彼の一挙手一投足を目で追ってしまう。
彼に抱かれたいのか、愛されていないのに体の関係を持つのが嫌なのか、自分自信の気持がよく分からない。
咲良は入浴を終えてドレッサーの前でスキンケアをしながら、鏡に映る夫の姿を伺った。
彼は右手で濡れた髪をタオルで拭きながら、もう一方の手でミネラルウォーターを飲んでいるところだった。男らしい喉仏がごくりと動く様に咲良は思わず見入ってしまう。
ルームウエアを着ていても、鍛えられた体が分かる。惚れ惚れする程の男ぶりに咲良は頬を染めずにいられない。
(恋愛感情を持たないようにしたいのに、全然上手くいかない)
いつになったら、この気持ちは落ち着くのだろうか。
「どうした?」
じっと見つめていたからだろうか。視線に気づいた颯斗が不思議そうな顔をして問いかけて来た。
「な、なんでもない」
まさか見惚れていたとは言えないので、視線を逸らす。
颯斗がくすりと笑いながら近づいてくる気配がした。
「咲良、今日は一緒に寝ようか」
「えっ?」
動揺のあまり上擦った声が出た。颯斗はそんな咲良を見て微笑した。
「冗談だ」
「じょ、冗談……だったんですか?」
彼はこんなときにふざける人なのだろうか。
戸惑う咲良の頭に、颯斗がぽんと手を置いた。
「髪が乱れてる」
「あ、本当ですね」
咲良は鏡を見ながら、手櫛で自分の髪を整える。
新居の寝室は夫婦同室で、セミダブルのベッドが二台、隙間を空けて並んでいる、新婚夫婦としてはよく見かけるインテリアだ。
けれど咲良と颯斗は同居しても婚姻届け出してからも、同室で眠りながら体の関係を持つことはなく過ごしていた。
契約には子供についての取り決めがない。颯斗も咲良もそのことについて話題に出さなかった。お互い出方を窺っていたのだと思う。
けれど今夜は婚姻届けを出した記念の夜だ。
(もし颯斗さんに誘われたらどうすればいいんだろう)
結婚した以上、夫婦生活を拒否するつもりはない。
しかも既に一度肌を重ねているのだ。
とはいえ、自分からその件について触れる勇気はない。
だから咲良は、寝室ではいつも緊張感を持っている。
意識し過ぎない方がいいと分かっているのに、どうしても彼の一挙手一投足を目で追ってしまう。
彼に抱かれたいのか、愛されていないのに体の関係を持つのが嫌なのか、自分自信の気持がよく分からない。
咲良は入浴を終えてドレッサーの前でスキンケアをしながら、鏡に映る夫の姿を伺った。
彼は右手で濡れた髪をタオルで拭きながら、もう一方の手でミネラルウォーターを飲んでいるところだった。男らしい喉仏がごくりと動く様に咲良は思わず見入ってしまう。
ルームウエアを着ていても、鍛えられた体が分かる。惚れ惚れする程の男ぶりに咲良は頬を染めずにいられない。
(恋愛感情を持たないようにしたいのに、全然上手くいかない)
いつになったら、この気持ちは落ち着くのだろうか。
「どうした?」
じっと見つめていたからだろうか。視線に気づいた颯斗が不思議そうな顔をして問いかけて来た。
「な、なんでもない」
まさか見惚れていたとは言えないので、視線を逸らす。
颯斗がくすりと笑いながら近づいてくる気配がした。
「咲良、今日は一緒に寝ようか」
「えっ?」
動揺のあまり上擦った声が出た。颯斗はそんな咲良を見て微笑した。
「冗談だ」
「じょ、冗談……だったんですか?」
彼はこんなときにふざける人なのだろうか。
戸惑う咲良の頭に、颯斗がぽんと手を置いた。
「髪が乱れてる」
「あ、本当ですね」
咲良は鏡を見ながら、手櫛で自分の髪を整える。