気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
四章


四章 確執

 婚姻届けを出した週末。
 咲良たち夫婦は、世田谷区にある颯斗の実家を訪問した。
 結婚の報告という用件なため、咲良はきちんとした印象があるネイビーのワンピースを選び、髪はすっきりハーフアップにした。メイクはナチュラルに。
 少し地味だが、真面目な雰囲気を嫌う人は少ない。義両親には一度挨拶をしているものの、兄とは初対面なので第一印象にかなり気を遣った。
 颯斗は咲良のワンピースより明度が低い紺のスーツで、思わず見とれてしまうくらい様になっていた。
 義両親は家族用のリビングに、所狭しと並べられた料理で歓迎してくれた。
「七月二十九日に婚姻届けを提出し受理されました」
 報告から始めると義母はほっとしたように微笑んだ。
「よかった。咲良さん、改めて颯斗をよろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
 義父は義母のように顔には出さなかったが、咲良たちの結婚を肯定的に受け止めてくれているのが伝わって来る。
 渡会リゾートのような大企業の経営者夫婦としては、かなり柔軟な態度で、一般家庭出身の咲良を不満に思っている様子はない。咲良は自分の幸運に感謝したくなった。
「さ、お料理を頂きましょう。今日は颯斗と咲良さんのお祝いだから朝から張り切ってしまったの」
「え……お義母様の手料理なんですか?」
 咲良は衝撃を受けてテーブルの上の料理を見回した。
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