気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
颯斗と同様に長身で、痩せ型。ビジネスマンらしいショートへアは少し癖がある。
シルバーフレームの眼鏡の向こうの切れ長目は怜悧さを感じるものだ。
「大丈夫。仕事が忙しかったんだろ?」
「ああ」
兄は颯斗に頷くと、咲良に目を向けた。
「咲良さんですね。渡会家の長男、彰斗(あきと)です。ようやく会えて嬉しいです」
切れ長で少し冷たく感じた兄の目が、柔らかなものになる。
「はじめまして。咲良です。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いえ。颯斗の我儘で急な結婚になったのですから、そんなに気を遣わないでください」
「ありがとうございます」
テーブルに兄が加わり、ますます賑やかになる。
義母は遅いと不満そうにしていたけれど、兄の料理を取り分け足りと嬉しそうだ。
(仲がいい家族なんだな)
会社の派閥争いや、婚約者候補とのトラブルなどが無ければ、何の問題もない家族だ。大らかで他人だった咲良を優しく受け入れてくれている。
途中で義父が集めたワインを振舞って貰ったりと、居心地のよい楽しい時間が流れる。
そのとき、ノックの音がした。
「五葉様がお見えです」
渡会家の家事使用人のようで、来客の知らせのようだ。
すると皆が揃って顔を曇らせた。
「なぜ五葉さんが? 約束はしていないんだろう?」
義父が顔をしかめながら言うと、兄が深刻そうな表情で頷いた。
「咲良さんが来ると分かっているのに、呼ぶわけないでしょう」
(一体誰が来るって言うの?)
明らかに望まない来客のようだが、咲良だけが状況を把握していない。
事情を聞きたいけれど、確認している暇もなく扉が開いた。
「こんにちは」
来客は若い女性だった。すらりと長身で体のラインが出る派手なワンピースを完璧に着こなしている美しい人だ。
どこかで見かけたことがあるような気がするが、モデル活動でもしているのだろうか。分からないが、先ほどからの颯斗たちの態度で彼女の立場を察することが出来た。
(この人が、お兄さんのお見合い相手……)
そして、颯斗を気に入り、積極的に迫っている人だ。
咲良は内心動揺していた。
颯斗と結婚した咲良を、彼女がよく思う訳がない。それどころか敵対心を持たれそうだ。
けれど、まさか今日対面するとは思ってもいなかったから、心の準備が出来ていない。自分はどんな態度を取ればいいのだろう。
シルバーフレームの眼鏡の向こうの切れ長目は怜悧さを感じるものだ。
「大丈夫。仕事が忙しかったんだろ?」
「ああ」
兄は颯斗に頷くと、咲良に目を向けた。
「咲良さんですね。渡会家の長男、彰斗(あきと)です。ようやく会えて嬉しいです」
切れ長で少し冷たく感じた兄の目が、柔らかなものになる。
「はじめまして。咲良です。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いえ。颯斗の我儘で急な結婚になったのですから、そんなに気を遣わないでください」
「ありがとうございます」
テーブルに兄が加わり、ますます賑やかになる。
義母は遅いと不満そうにしていたけれど、兄の料理を取り分け足りと嬉しそうだ。
(仲がいい家族なんだな)
会社の派閥争いや、婚約者候補とのトラブルなどが無ければ、何の問題もない家族だ。大らかで他人だった咲良を優しく受け入れてくれている。
途中で義父が集めたワインを振舞って貰ったりと、居心地のよい楽しい時間が流れる。
そのとき、ノックの音がした。
「五葉様がお見えです」
渡会家の家事使用人のようで、来客の知らせのようだ。
すると皆が揃って顔を曇らせた。
「なぜ五葉さんが? 約束はしていないんだろう?」
義父が顔をしかめながら言うと、兄が深刻そうな表情で頷いた。
「咲良さんが来ると分かっているのに、呼ぶわけないでしょう」
(一体誰が来るって言うの?)
明らかに望まない来客のようだが、咲良だけが状況を把握していない。
事情を聞きたいけれど、確認している暇もなく扉が開いた。
「こんにちは」
来客は若い女性だった。すらりと長身で体のラインが出る派手なワンピースを完璧に着こなしている美しい人だ。
どこかで見かけたことがあるような気がするが、モデル活動でもしているのだろうか。分からないが、先ほどからの颯斗たちの態度で彼女の立場を察することが出来た。
(この人が、お兄さんのお見合い相手……)
そして、颯斗を気に入り、積極的に迫っている人だ。
咲良は内心動揺していた。
颯斗と結婚した咲良を、彼女がよく思う訳がない。それどころか敵対心を持たれそうだ。
けれど、まさか今日対面するとは思ってもいなかったから、心の準備が出来ていない。自分はどんな態度を取ればいいのだろう。