気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
出来れば今日は挨拶程度にとどめたいのだけれど。
しかし彼女は渡会家の人たちに挨拶を終えると、咲良に目を向けた。
気難しそうな顔をしながら、まるで品定めでもするかのように座っている咲良を見下ろして来る。
「あなたが颯斗さんと婚約したいって言ってる人?」
初対面の相手に対する態度とは思えない失礼さに加えて、マナーが全くなっていなくて驚いた。
外見がいくら美しくても、これでは台無しだ。
咲良は多少の不快感を覚えながら答えようとした。けれどそれよりも先に颯斗が発言した。
「五葉さん、彼女は俺の妻です」
「えっ?」
彼女が驚愕したように上擦った声を上げる。
「今日は結婚の挨拶の為に立ち寄りましたが、そろそろ帰ろうと思っていたんです」
颯斗が咲良の背に手を添える。予定より早いがお暇しようという合図だと気付き頷いた。
(この女性は間違いなく問題の女性だけれど、今は話す必要がないということみたい)
義父母も兄も口出ししてこないと言うことは、この場に咲良はいない方がいいのだろう。
ならばさっさと退散するに限る。
静かに立ち上がり、脇に置いてあったバッグを掴んだ。
「俺たちはここで失礼します」
颯斗と同様に頭を下げてから、部屋を出る為扉に向かう。同時にヒステリックな声が追いかけて来た。
「颯斗さん待って、待ちなさいよ!」
颯斗は無表情で振り返る。
「申し訳ありませんが、急いでいるので失礼します。用件は父にお願いします」
女性はぎりっと音が聞こえて来そうな程、歯をくいしばり睨みつけて来る。その激情は怖さを感じる程だった。
颯斗は咲良の手を引きながら足早に玄関を出て、ガレージに止めてある車に向かう。
彼がこんな風に強引な態度を取るのは初めてだ。
(それ程あの女性と関わりたくないんだろうな)
彼は車に乗り込み渡会家の敷地を出るとようやく余裕が出来たようだった。
申し訳なさそうな表情で横目で咲良の様子を見る。
「急なことで戸惑ったような。悪かった」
「驚きましたけど大丈夫です。彼女がお兄さんのお見合い相手なんですよね?」
颯斗が暗い表情で頷いた。
「ああ、そうだ。彼女は五葉瀬奈と言って、五葉銀行の頭取の娘なんだ」
「五葉銀行……」
五葉銀行と言えば誰もが知るメガバンクだ。
しかし彼女は渡会家の人たちに挨拶を終えると、咲良に目を向けた。
気難しそうな顔をしながら、まるで品定めでもするかのように座っている咲良を見下ろして来る。
「あなたが颯斗さんと婚約したいって言ってる人?」
初対面の相手に対する態度とは思えない失礼さに加えて、マナーが全くなっていなくて驚いた。
外見がいくら美しくても、これでは台無しだ。
咲良は多少の不快感を覚えながら答えようとした。けれどそれよりも先に颯斗が発言した。
「五葉さん、彼女は俺の妻です」
「えっ?」
彼女が驚愕したように上擦った声を上げる。
「今日は結婚の挨拶の為に立ち寄りましたが、そろそろ帰ろうと思っていたんです」
颯斗が咲良の背に手を添える。予定より早いがお暇しようという合図だと気付き頷いた。
(この女性は間違いなく問題の女性だけれど、今は話す必要がないということみたい)
義父母も兄も口出ししてこないと言うことは、この場に咲良はいない方がいいのだろう。
ならばさっさと退散するに限る。
静かに立ち上がり、脇に置いてあったバッグを掴んだ。
「俺たちはここで失礼します」
颯斗と同様に頭を下げてから、部屋を出る為扉に向かう。同時にヒステリックな声が追いかけて来た。
「颯斗さん待って、待ちなさいよ!」
颯斗は無表情で振り返る。
「申し訳ありませんが、急いでいるので失礼します。用件は父にお願いします」
女性はぎりっと音が聞こえて来そうな程、歯をくいしばり睨みつけて来る。その激情は怖さを感じる程だった。
颯斗は咲良の手を引きながら足早に玄関を出て、ガレージに止めてある車に向かう。
彼がこんな風に強引な態度を取るのは初めてだ。
(それ程あの女性と関わりたくないんだろうな)
彼は車に乗り込み渡会家の敷地を出るとようやく余裕が出来たようだった。
申し訳なさそうな表情で横目で咲良の様子を見る。
「急なことで戸惑ったような。悪かった」
「驚きましたけど大丈夫です。彼女がお兄さんのお見合い相手なんですよね?」
颯斗が暗い表情で頷いた。
「ああ、そうだ。彼女は五葉瀬奈と言って、五葉銀行の頭取の娘なんだ」
「五葉銀行……」
五葉銀行と言えば誰もが知るメガバンクだ。