気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「渡会リゾートとしては、五葉銀行との関係を強化して安定した融資を受けたい。その為の縁談だった。五葉銀行としても重要な取引だから、順調に話が進んでいたんだ」
「でも、彼女が颯斗さんを好きになってしまったんですね」
「渡会リゾートに関わっていない俺と結婚しても意味がないのに、彼女はそんなことは気にしていないようだ。考えられない言動で両親も怒り心頭だが、五葉銀行との関係を考えるとあまり強く出られない」
颯斗は憂鬱そうに溜息を吐いた。
「でも颯斗さんが結婚したことを伝えられたので、さすがに諦めるんじゃないですか?」
「そうだな……」
気がかりがあるのか颯斗は浮かない表情だ。
彼は申し訳なさそうな目で咲良を見つめた。
「咲良と直接関わらせる気はなかったのに、まさか実家まで押しかけて来るとは思わなかった。嫌な想いをさせて悪かった」
「私なら大丈夫です」
「本当に?」
「はい。驚いてしまってあまり話せなかったけど、颯斗さんが私と結婚したのは、五葉さん対策なんだから、しっかり役目を務めます」
咲良の言葉に、颯斗はなぜか切なそうに目を細める。
「……ありがとう」
「いえ、協力出来ることが有ったら言って下さい」
「ああ」
「それから気になったんですけど、お兄さんは五葉さんとの縁談を断る気はないんですか?」
彼女が渡会家に出入りするのは、兄の見合い相手だからだろう。
はっきり破談にしてしまえば、近づかなくなるのでは?
「そう出来たらいいんだが、簡単にはいかないんだ。兄も彼女には頭を悩ませているけれど、渡会リゾートのことを考えると個人の感情では動けない」
「そうなんですね……」
兄は責任感が強い人なのだろう。そして結婚をビジネスとして考えているのかもしれない。
「何もかも兄に押し付けたようで申し訳ないな」
心から思っているのだろう。颯斗の表情には苦悩が見えた。
「颯斗さんは悪くないと思います。お兄様もそれは分かっているんじゃないでしょうか」
渡会家の人たちはとても仲が良くて、家族を大切にしているように見えた。
「そうだな、ありがとう」
「え? ありがとう?」
首を傾げる咲良に、颯斗はふっと微笑んだ。
「俺を慰めてくれたんだろう?」
「あ……はい。颯斗さんが落ち込んでいるように見えたので。元気になって欲しいと思いました」
「でも、彼女が颯斗さんを好きになってしまったんですね」
「渡会リゾートに関わっていない俺と結婚しても意味がないのに、彼女はそんなことは気にしていないようだ。考えられない言動で両親も怒り心頭だが、五葉銀行との関係を考えるとあまり強く出られない」
颯斗は憂鬱そうに溜息を吐いた。
「でも颯斗さんが結婚したことを伝えられたので、さすがに諦めるんじゃないですか?」
「そうだな……」
気がかりがあるのか颯斗は浮かない表情だ。
彼は申し訳なさそうな目で咲良を見つめた。
「咲良と直接関わらせる気はなかったのに、まさか実家まで押しかけて来るとは思わなかった。嫌な想いをさせて悪かった」
「私なら大丈夫です」
「本当に?」
「はい。驚いてしまってあまり話せなかったけど、颯斗さんが私と結婚したのは、五葉さん対策なんだから、しっかり役目を務めます」
咲良の言葉に、颯斗はなぜか切なそうに目を細める。
「……ありがとう」
「いえ、協力出来ることが有ったら言って下さい」
「ああ」
「それから気になったんですけど、お兄さんは五葉さんとの縁談を断る気はないんですか?」
彼女が渡会家に出入りするのは、兄の見合い相手だからだろう。
はっきり破談にしてしまえば、近づかなくなるのでは?
「そう出来たらいいんだが、簡単にはいかないんだ。兄も彼女には頭を悩ませているけれど、渡会リゾートのことを考えると個人の感情では動けない」
「そうなんですね……」
兄は責任感が強い人なのだろう。そして結婚をビジネスとして考えているのかもしれない。
「何もかも兄に押し付けたようで申し訳ないな」
心から思っているのだろう。颯斗の表情には苦悩が見えた。
「颯斗さんは悪くないと思います。お兄様もそれは分かっているんじゃないでしょうか」
渡会家の人たちはとても仲が良くて、家族を大切にしているように見えた。
「そうだな、ありがとう」
「え? ありがとう?」
首を傾げる咲良に、颯斗はふっと微笑んだ。
「俺を慰めてくれたんだろう?」
「あ……はい。颯斗さんが落ち込んでいるように見えたので。元気になって欲しいと思いました」