気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
突然の報告に、心臓がドキドキしている。
(これでもう副社長のことを恐れなくていいんだ)
いつどこで悪く言われているのか分からない現状は、やはり気分が悪いものだった。
ほっとしていると、颯斗と視線が重なった。
「よかったな」
優しい声音に、ますます嬉しくなる。
「聞こえていたんですね。本当によかった、これで安心出来ます」
「ああ」
颯斗は頬を染めて喜ぶ咲良を自分も嬉しそうに見つめている。
「私の疑いも晴れたんです。どうやら外部からの働きかけがあったみたいで……」
颯斗に説明をしようとしていた咲良は、はっとして言葉を飲み込んだ。
「……もしかして、颯斗さんが?」
副社長を解任に追い込む手段と、コネクションがある人なんて滅多にいない。
そして咲良の冤罪を晴らしてくれる人は、彼以外にいない。
「妻を傷つけた奴を許す訳にはいかないからな」
不敵に笑って彼が言う。
咲良はそんな颯斗に見惚れ、上手く言葉でてこない。
「……ありがとうございます」
「当然のことをしただけだ」
「でも……」
「これからも君は俺が守るよ」
胸の奥からこみ上げるものがあり、咲良は泣き笑いになった。
彼に愛されていはいないけれど、自分はとても大切にされている。
「嬉しいです……ありがとう颯斗さん」
自分は幸せだ。颯斗へ感謝しながら、心の片隅にある切なさはしまい込んだ。
九月一日。とうとう咲良の転職初出勤の日がやって来た。
初めて社会に出る訳ではないのに、昨夜から緊張して心臓がドキドキしている。
新しい職場で上手くやっていけるのか。悲観している訳ではないがやっぱり不安で落ち着かない。
「そんなに緊張しなくても咲良なら大丈夫。いつも通りにやればいいんだ」
「いつも通りって言われても、金洞商会とワタライワークスじゃ全然雰囲気が違いますから」
はたして咲良は上手く馴染むことが出来るのだろうか。
咲良の他にも五人中途採用の社員が入社する。同期がいるのは心強いが、経営者の妻だと知られたら距離を置かれないだろうか。
「そろそろ行こう」
「はい」
玄関で靴を履き、姿身で全身のチェックをする。入社初日らしいシンプルなライトグレーのスーツと書類を仕舞いやすいバッグを選んだ。身だしなみは問題ない。
「私が颯斗さんの妻だって知ってる社員はどれくらいいるんですか?」
(これでもう副社長のことを恐れなくていいんだ)
いつどこで悪く言われているのか分からない現状は、やはり気分が悪いものだった。
ほっとしていると、颯斗と視線が重なった。
「よかったな」
優しい声音に、ますます嬉しくなる。
「聞こえていたんですね。本当によかった、これで安心出来ます」
「ああ」
颯斗は頬を染めて喜ぶ咲良を自分も嬉しそうに見つめている。
「私の疑いも晴れたんです。どうやら外部からの働きかけがあったみたいで……」
颯斗に説明をしようとしていた咲良は、はっとして言葉を飲み込んだ。
「……もしかして、颯斗さんが?」
副社長を解任に追い込む手段と、コネクションがある人なんて滅多にいない。
そして咲良の冤罪を晴らしてくれる人は、彼以外にいない。
「妻を傷つけた奴を許す訳にはいかないからな」
不敵に笑って彼が言う。
咲良はそんな颯斗に見惚れ、上手く言葉でてこない。
「……ありがとうございます」
「当然のことをしただけだ」
「でも……」
「これからも君は俺が守るよ」
胸の奥からこみ上げるものがあり、咲良は泣き笑いになった。
彼に愛されていはいないけれど、自分はとても大切にされている。
「嬉しいです……ありがとう颯斗さん」
自分は幸せだ。颯斗へ感謝しながら、心の片隅にある切なさはしまい込んだ。
九月一日。とうとう咲良の転職初出勤の日がやって来た。
初めて社会に出る訳ではないのに、昨夜から緊張して心臓がドキドキしている。
新しい職場で上手くやっていけるのか。悲観している訳ではないがやっぱり不安で落ち着かない。
「そんなに緊張しなくても咲良なら大丈夫。いつも通りにやればいいんだ」
「いつも通りって言われても、金洞商会とワタライワークスじゃ全然雰囲気が違いますから」
はたして咲良は上手く馴染むことが出来るのだろうか。
咲良の他にも五人中途採用の社員が入社する。同期がいるのは心強いが、経営者の妻だと知られたら距離を置かれないだろうか。
「そろそろ行こう」
「はい」
玄関で靴を履き、姿身で全身のチェックをする。入社初日らしいシンプルなライトグレーのスーツと書類を仕舞いやすいバッグを選んだ。身だしなみは問題ない。
「私が颯斗さんの妻だって知ってる社員はどれくらいいるんですか?」