気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「大丈夫です。でも颯斗さんが来てくれなかったらどうなってたことか……本当に気てくれてありがとう」
「俺が咲良を守るのは当たり前だって言っただろ?」
 颯斗が咲良の手をそっと取り、指先に口づける。
 心から愛する妻に向けるようなその仕草に、咲良は頬を染めた。
「颯斗さん……」
「咲良を愛してる」
「え……」
 思いがけない言葉に驚く咲良を見つめながら颯斗が言葉を続ける。
「初めて会ったあの日からずっと咲良を想っている」
「……本当に?」
 どくんどくんと心臓が音を立てる。
「本当だ。一時も忘れられなくて、会いたくて、再会したときは本当に嬉しかった。契約結婚を持ち掛けたのは、なんとしても君を手に入れたかったからだ」
「そんな……それなら私たちは初めから両想いだったの?」
 思わず漏れた言葉に、颯斗の顔が輝く。
「俺は咲良に嫌われていると思っていたから、契約結婚でも妻にして、いつか振り向いてもらうつもりだったんだ。でももっと早く気持ちを伝えるべきだった」
「私も、もっと早く勇気を出せばよかった」
 咲良の言葉に颯斗が満足そうに目を細める。
「契約結婚は今日で終わりだ。咲良、俺たちは本当の夫婦になろう」
 ふたりの距離はゼロになり唇が触れ合った。
 
 寝室に入るとすぐに颯斗は咲良を自分のベッドに引き込んだ。
 固い筋肉で覆われた逞しい体の上に重なり見つめ合う。照れてしまうけれど、咲良の腰には颯斗の腕が周り身動きできない。
 そっと唇が重なり合う。
 初めは反応を伺うようだったキスは、徐々に濃厚なものに変わっていく。
 触れ合う肌は熱を帯び、気付けば素肌で抱き合っていた。
 長いキスの後、颯斗は色っぽい溜息を吐いた。
「いったん触れると止められなくなるな」
 離れていたのはほんの数秒で、すぐに深く舌を絡め合う。
 咲良の思考は真っ白になり、ただ夫が与えてくれる熱を感じていた。
 一度火が付くと、今までどうして離れて眠っていられたのか不思議なほど離れ難くなる。
 彼と体を重ねるのは咲良にとって至福の時間だ。それは体の相性がいいというのもあるだろうが、それ以上に心が満足しているのだと今はっきり感じた。
 ただ彼が愛おしいと思う。
「……好き」
 高まった気持ちが声になる。それはとても小さな声だったけれど、颯斗は聞き逃さず、咲良の体をなぞっていた手をぴたりと止めた。
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