気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「俺の方が愛してる。今からそれを証明するから」
 色っぽく囁いた彼は咲良をぎゅっと抱きしめ、押し付けるように唇を重ねて来た。
「んんっ!」
 何度も唇を重ねた後、額から瞼、耳元を絶え間なく愛撫される。
「ようやく手に入れた……もう離さない」
 感情が溢れたその抱擁は息が止まるくらい強くて苦しいのに幸せだ。
 本当の夫婦になったその日の夜、咲良と颯斗は心行くまでお互いを求め合った。

 翌日。咲良と颯斗は朝一番に副社長の件について警察に相談に行き被害届を提出した。加害者が分かっているので、副社長の元に警察が行くのは時間の問題だ。
 その後は急ぎ出社して普段通り仕事をする。
 遅刻した分慌ただしい。颯斗や他の役員から指示された文書作成や資料集めを出来るところまで終わらせ、昼前には羽菜と共に手土産を買いに出た。
 ついでにランチを済ませて帰社した後は、スケジュール調整や出張手配、秘書業務とは離れるが、労務担当の手伝いなど次々に仕事が入って来る。
 颯斗は金洞副社長と比べると格段に手のかからないボスではあるが、その分他の仕事があるので大変だ。
 それでも咲良を尊重してくれる同僚たちと協力して仕事をするのは、やりがいがあり楽しかった。
 颯斗と同行する開発担当に手土産を渡して見送った後は、仕事の残りを片付ける。 
 仕事後、颯斗の幼馴染と会う約束があり、咲良は自宅で待機する予定でいたが、昨夜のことがあるので、念のため会社で颯斗の迎えを待つことになった。
 仕事をしながら待っていると八時十五分過ぎに颯斗が帰社した。
 彼はフロアには咲良ひとりなのを確認すると、近づいて来て微笑む。
「ただいま」
「おかえりなさい」
 昨夜のことがあるからだろうか。ふたりの間にはたちまち甘い空気が漂い、咲良は恥ずかしくなって目を伏せた。
「仕事は終わった?」
「はい、だいたいは。もう出られます」
「それじゃあ、行こう」
 咲良はパソコンの電源を落とし、荷物を持って立ち上がる。
 当たり前のように颯斗に肩を抱かれてオフィスビルを出て待たせていた車に乗った。
「十五分くらいで着く。それまでに幼馴染について話しておくが、彼は甘玉堂の社長なんだ」
「えっ? 和菓子の甘玉堂?」
 思いがけない情報に咲良は驚きの声を上げる。
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