気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
 しばらくすると、大きなお盆を手に朔朗が戻って来た。
「お待たせ。咲良ちゃんお腹空いてない? お茶に合ううちの商品をいくつか持って来たから」
「ありがとうございます」
 朔朗を手伝ってお盆からお茶と本格的な和菓子をテーブルに並べる。
 甘玉堂は元は伝統ある和菓子の店でもある為、どれも美味しそうだ。
 しばらくお茶菓子を楽しみ朔朗との会話に慣れた頃に、颯斗が表情を引き締め切り出した。
「HARADAとの話は纏まりそうだ」
 朔朗の顔が明るくなる。
「よかった。これでますます儲かるね! 颯斗のおかげだよ」
「颯斗さんが二社を繋いだんですか?」
 咲良の疑問に颯斗が首を振って否定する。
「ここ数年和菓子が世界的にも評価されているというニュースは聞いたことがあるか? 注目の高さから大きなイベントが開催され、甘玉堂も参加し人気を得たんだ。その結果HARADAから商品提携の申し出が来た」
「HARADAの方から? それはすごいですね」
 知名度で言えば、HARADAの方がずっと上だ。それでもコラボを提案するのは甘玉堂のイメージがいいからだろうか。
「うちとしては大歓迎でもちろん話を受けたんだけど、流通にトラブルが発生してね。うちは昔ながらの店舗が多いから颯斗の会社にサービスを依頼するまで全国一括で在庫管理なんてしてなかったし、パソコンのスキルもない従業員の方が多いからHARADAが提示するやり方に馴染めそうになかった。いっそのこと颯斗の会社に間に入って貰ってシステムを整えて貰った方がいいと思って相談してたんだ」
 颯斗の説明に補足するように朔朗が言った。
「なるほど。トラブルというか現場の担当者がHARADAの要求に対応する管理スキルがないから、困っていたんですね」
「そうそう。上手く解決しそうだからよかったよ」
 仕事の話はそこで終わり、話題は咲良たち夫婦についてに変わっていく。
 和やかに話すにつれて、朔朗が嬉しそうな表情になっていた。  
「ふたりは仲良くやっているみたいだね」
「はい」
「よかった。安心したよ」
「安心ですか?」
 首を傾げる咲良に、朔朗が大きく頷く。
「うん。俺は颯斗がこのまま報われない恋を……」
「朔朗、余計なこと言うな」
< 81 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop