気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
 颯斗のベッドの前で「お休みなさい」と声をかけてから自分のベッドに向かおうとすると、颯斗に背後から抱きしめられた。
 驚く間もなく彼のベッドになだれ込み、瞬く間に組み敷かれる。
「颯斗さん? 眠かったんじゃないの?」
 囲うように腕を着き見下ろしてくる颯斗に、咲良は戸惑いながら問いかけた。
 颯斗は眠気など全く見られない、強くそして優しい眼差しで咲良を見下ろす。
「油断している咲良を見てたら襲いたくなった」
「家で油断するのは当たり前なのに……」
 クレームを入れると颯斗はなぜか喜んでしまった。
「以前は俺を警戒してただろ? それなのに今は可愛いあくびまで見せてくれるようになった。心を許してくれているんだって実感したら、ますます咲良が愛しくてたまらなくなったんだ」
 そんな風に言われたら拒否出来ない。ついさっきまで感じていた睡魔も今はどこかに消えてしまった。
(寝不足気味だけど、新婚だし)
 結局咲良もいつだって颯斗を強く求めているのだ。
 咲良が颯斗の背に腕を回すと、それを合図にふたりの体がぴったりと重なった。
 こうやってふたりで過ごす時間が嬉しくて、微笑み合いながらキスを交わす。
「今日はこのまま一緒に寝よう」
 颯斗が咲良の腰をぎゅっと抱き寄せる。
「狭くないですか? しっかり休まないと明日の仕事に障るんじゃ」
 彼は長身でただでさえベッドが小さく見えるのに、咲良が隣にいたら窮屈ではないだろうか。
「咲良を抱いて眠る方が心が休まる。でも大きなベッドに買い替えるのもいいな」
 そうすればいつもふたりで抱き合って眠れる。颯斗が耳元で甘く囁き、咲良のパジャマの下から、そっと手を差し入れた。
 肌を直接撫でる手がこれから始まる甘美な時間への期待をもたらす。
(明日も寝不足になってしまいそう)
 咲良は熱を持ち始めた夫の体を抱きしめた。

 ◇◇

結婚して三ヶ月が過ぎた。
 咲良とは颯斗が願っていた通り本当の夫婦になることが出来た。想いを伝えあってからは、愛情深い関係が築けている。
 今もふたりで眠るには狭い颯斗のベッドに、すやすや寝息を立てる咲良がいて、颯斗は幸せを噛み締めていた。
 腕の中の温もりが愛しくて、颯斗の心と体を癒してくれる。
 咲良と結婚出来てよかったと心から思う。
 幸せを感じていると、颯斗より一回り以上小さな体が身じろぎした。
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