気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「事実を言ってるだけでしょ? 颯斗ほどの男があんなどこにでもいそうな女を真剣に選ぶはずがないわ。絶対に理由がある。例えば偽装結婚とか?」
それどころか挑発するような発言を続ける。
(さっきから酷いことばかり言うのね。私を完全に見下してる)
咲良は唇を噛み締める。その瞬間羽菜の大きな声がした。
「違うわ。颯斗さんは彼女を大切にしてるもの」
「それは演技でしょ」
「演技とは思えない。だって偽装結婚する必要なんてないじゃない」
羽菜の言葉が痛いところをついたのか瀬奈が黙る。
「ねえ、いい子ぶったことばかり言ってるけど、本当は羽菜だって離婚すればいいと思ってるんでしょ? だってあんたは昔から颯斗さんが好きだったものね」
(えっ?)
咲良の心臓がドクンと音を立てる。
(羽菜さんが颯斗さんを好き?)
「違うから! 変なこと言わないで!」
羽菜は否定したが、瀬奈はますます調子にのる。
「そうやってむきになるのが証拠でしょ? まあいいわ。とにかく早く辞めてよね」
「……話にならない! とにかく颯斗さんの奥さんには絶対に手を出さないで。でないと大変なことになるんだから」
「大変ってなによ。あの女のことは調査済だけど脅威になるような要素はゼロよ。貧乏家庭出身で友人関係に強力なコネもないんだから。じゃあそろそろ行くから」
一方的にまくし立てると、瀬奈は羽菜の制止を聞かず去って行く。
(まずい! こっちに来ちゃった)
こんなところで隠れて盗み聞きをしていただなんて知られる訳にはいかない。
咲良は慌てて大きな柱の陰に駆けこむ。
瀬奈にも羽菜にも見られていないはずだが、瀬奈がこちを見た気がしてぞくりと背中が冷えた。
瀬奈に続き羽菜も立ち去ったのを確認してから、咲良は柱によりかかりほっと息を吐いた。
(まさかこんなことになっていたなんて)
瀬奈が自己中心的な性格なのはしっていたがまさか会社にまで押しかけて騒ぎ立てるとは予想外だ。
咲良は俯き考え込みながらオフィスビルを出た。
これほど酷い状況ならば、咲良には知らられないようにしていたのも納得出来る。
瀬奈は颯斗の結婚は偽装だと思い込み、ふたりが離婚するのを待っているなんて、本人に言えるはずがない。
颯斗が最近忙しくしていて個人的に法律の相談をしていると言っていたのは、この件の対応策を検討しているのかもしれない。
それどころか挑発するような発言を続ける。
(さっきから酷いことばかり言うのね。私を完全に見下してる)
咲良は唇を噛み締める。その瞬間羽菜の大きな声がした。
「違うわ。颯斗さんは彼女を大切にしてるもの」
「それは演技でしょ」
「演技とは思えない。だって偽装結婚する必要なんてないじゃない」
羽菜の言葉が痛いところをついたのか瀬奈が黙る。
「ねえ、いい子ぶったことばかり言ってるけど、本当は羽菜だって離婚すればいいと思ってるんでしょ? だってあんたは昔から颯斗さんが好きだったものね」
(えっ?)
咲良の心臓がドクンと音を立てる。
(羽菜さんが颯斗さんを好き?)
「違うから! 変なこと言わないで!」
羽菜は否定したが、瀬奈はますます調子にのる。
「そうやってむきになるのが証拠でしょ? まあいいわ。とにかく早く辞めてよね」
「……話にならない! とにかく颯斗さんの奥さんには絶対に手を出さないで。でないと大変なことになるんだから」
「大変ってなによ。あの女のことは調査済だけど脅威になるような要素はゼロよ。貧乏家庭出身で友人関係に強力なコネもないんだから。じゃあそろそろ行くから」
一方的にまくし立てると、瀬奈は羽菜の制止を聞かず去って行く。
(まずい! こっちに来ちゃった)
こんなところで隠れて盗み聞きをしていただなんて知られる訳にはいかない。
咲良は慌てて大きな柱の陰に駆けこむ。
瀬奈にも羽菜にも見られていないはずだが、瀬奈がこちを見た気がしてぞくりと背中が冷えた。
瀬奈に続き羽菜も立ち去ったのを確認してから、咲良は柱によりかかりほっと息を吐いた。
(まさかこんなことになっていたなんて)
瀬奈が自己中心的な性格なのはしっていたがまさか会社にまで押しかけて騒ぎ立てるとは予想外だ。
咲良は俯き考え込みながらオフィスビルを出た。
これほど酷い状況ならば、咲良には知らられないようにしていたのも納得出来る。
瀬奈は颯斗の結婚は偽装だと思い込み、ふたりが離婚するのを待っているなんて、本人に言えるはずがない。
颯斗が最近忙しくしていて個人的に法律の相談をしていると言っていたのは、この件の対応策を検討しているのかもしれない。