拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
中では、数人の女性が話し合っていたりデザイン画を描いていた。
「崇臣副社長!」
こちらに気付いた女性社員が声を上げ、一斉に全員がこちらを向く。途端に、棘のある視線を向けられたのが分かった。
崇臣さんが言ってた『女性のアピールが面倒』とはこのことか。
今、ここにいる女性たちにとって〝崇臣さんに腰を抱かれて入ってきた作業服の女〟は敵らしい。
「そちらは?」
一番歳の上らしい女性社員がこちらにやってきて、慌てて一歩前に出た。
「棗ソーイング工房にてデザイナーをしております、桜倉琶月と申します」
ポケットから名刺を取り出し、差し出す。彼女はそれを受け取ると「あなたが」と一言。顔を上げると、ニコッと優しく微笑まれた。
「よろしくお願いしますね、桜倉さん」
その笑みには、何が黒いものか含まれている気がしなくもない。けれどこれからは仕事仲間でもある。私も「こちらこそ」と笑みを返した。
「彼女がこの新ブランドマネージャー。ブランドイメージは彼女から訊いて」
「はい」
私と崇臣さんが会話をしているのにも関わず、彼女は崇臣さんに話しかけていた。
「彼女、崇臣さんとは親密なんですね」
「ああ。婚約者だからね」
瞬間、部屋内の空気がピリっと張り詰める。同時に、とんでもない殺意みたいなものを感じて、背筋がぞわりと粟立った。
けれどそれは一瞬で、空気はすぐに元に戻る。
「桜倉さん、ね。さっそく打ち合わせをしましょうか」
ブランドマネージャーさんに促され、さっそくテーブルへ向かう。
「俺は席を外すけど、何かあったらすぐ呼んで」
崇臣さんはそう耳元で囁くと、ウィンクをして出て行った。
行きの車内で、連絡先は交換している。けれど、きっと連絡をする暇なんてないだろう。ランジェリーは初めてだ。だから、学ばなければいけないことが、たくさんある。
「崇臣副社長!」
こちらに気付いた女性社員が声を上げ、一斉に全員がこちらを向く。途端に、棘のある視線を向けられたのが分かった。
崇臣さんが言ってた『女性のアピールが面倒』とはこのことか。
今、ここにいる女性たちにとって〝崇臣さんに腰を抱かれて入ってきた作業服の女〟は敵らしい。
「そちらは?」
一番歳の上らしい女性社員がこちらにやってきて、慌てて一歩前に出た。
「棗ソーイング工房にてデザイナーをしております、桜倉琶月と申します」
ポケットから名刺を取り出し、差し出す。彼女はそれを受け取ると「あなたが」と一言。顔を上げると、ニコッと優しく微笑まれた。
「よろしくお願いしますね、桜倉さん」
その笑みには、何が黒いものか含まれている気がしなくもない。けれどこれからは仕事仲間でもある。私も「こちらこそ」と笑みを返した。
「彼女がこの新ブランドマネージャー。ブランドイメージは彼女から訊いて」
「はい」
私と崇臣さんが会話をしているのにも関わず、彼女は崇臣さんに話しかけていた。
「彼女、崇臣さんとは親密なんですね」
「ああ。婚約者だからね」
瞬間、部屋内の空気がピリっと張り詰める。同時に、とんでもない殺意みたいなものを感じて、背筋がぞわりと粟立った。
けれどそれは一瞬で、空気はすぐに元に戻る。
「桜倉さん、ね。さっそく打ち合わせをしましょうか」
ブランドマネージャーさんに促され、さっそくテーブルへ向かう。
「俺は席を外すけど、何かあったらすぐ呼んで」
崇臣さんはそう耳元で囁くと、ウィンクをして出て行った。
行きの車内で、連絡先は交換している。けれど、きっと連絡をする暇なんてないだろう。ランジェリーは初めてだ。だから、学ばなければいけないことが、たくさんある。