拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
夢中になってメモを取り、どのくらい経ったのだろう。

「琶月」

名前を呼ばれ、ドアの方を向けば崇臣さんが立っていた。

私、崇臣さんに連絡どころか工房にも連絡入れてない!
突然思い出し青ざめると、崇臣さんはフフッと笑った。

「どうしたの?」
「工房に連絡入れるの忘れてました!」
「それは大丈夫、俺が入れといた。で、旦那様に連絡はないのかな?」

旦那様……!
突然繰り出された夫婦ワードに、顔が熱くなってしまう。

「た、崇臣さんは何かあったらって言ってたじゃないですか! 私、お借りした資料のメモを取るのに夢中で、だから、その、すみません」

すると崇臣さんは、途端に肩を揺らし始める。どうやら笑いをこらえているらしい。

「ごめん、あまりにも君らしいと思ったから」
「はい?」
「褒めているんだ」

そう言うと、崇臣さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。

「疲れただろう、休憩にしよう。皆、ランチへ出ているよ」
「へ?」

周りを見れば、部屋内には誰もいない。
集中していると、食事を忘れてしまう。私の悪い癖が出た。

「すみません、気を遣っていただいて」
「君は大切な奥さんだからね」

崇臣さんはそう言って、私をランチに連れ出した。
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