拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
え!?

お腹のお肉をつままれただけなのに、なぜか顔が火を噴いたように熱い。

「そんなことないと思うけれど」
「そ、そ、そういうことじゃないです!」

思わずお腹を押さえて後ずさる。

「大丈夫、琶月は見たところ日本人女性の平均身長はある。お腹周りも特段大きいわけじゃない。そして、その服は日本サイズで売っている。つまり――」
「日本人にも似合うサイズってことですか」
「そう。琶月にも似合うサイズってことだよ」

なぜか言い負かされてしまう。けれど、そういうことじゃない。改めて、手にしていたワンピースを見た。

「好きなものを愛でていたい気持ちは分かるよ」
「え?」

振り向けば、崇臣さんは私の手にしていたワンピースを、クローゼットの上部に掛けた。
思わず服に見惚れてしまう。さらりと揺れるスカートが、部屋の明かりを反射する。その光沢が美しい。

「大好きなんだね、服が」
「はい……」

じっとその美しいシルエットを見つめていると、崇臣さんが不意に口を開いた。

「君は本当に、想定外だ」
「すみません」
「いや、褒めている。どうやら俺には、方針転換が必要らしい」
「はい?」
「いや、こっちの話だ。もっと聞かせてくれないかな。琶月の好きなもののこと」

それから、崇臣さんは色々と聞いてくれた。好きなブランド、好きな生地、尊敬するデザイナーや今までデザインしたドレスの思い出まで。

「ペラペラとすみません」

一通り話したところで、はっとして言うと崇臣さんはケラケラと笑った。

「いや、興味深いよ。新たな知識を得ることは、楽しいからね」

そう言うと、彼は腕にしていた時計をちらりと見る。

「そろそろ夕飯にしようか。琶月は何が食べたい?」
「食べれるものなら、何でも……」
「服以外のことには、無頓着」

崇臣さんはそう言うと、またケラケラ笑った。
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