拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
それからは、工房やアトリエでデザインを詰めてゆく作業に追われた。練習がてら、アトリエでパターンを作ったりもした。私が作れなければ、工房の皆に説明もできない。ランジェリーは初めてだから、なおさら。

ある晩、夢中になってパターンを作っていると、崇臣さんがアトリエへやってきた。

「調子はどう?」
「楽しいです! ランジェリーは初めてですけれど、頂いたのがどれも素敵なデザインで、ワクワクしちゃって」
「そう」

明日は、SJH本社での会議に参加する。それもあって、気持ちが昂っているのだ。そんな私の顔を見て、崇臣さんはなぜか微笑む。

「でも、無理は禁物」
「へ?」
「休憩はちゃんと取らなきゃ、だよ」

そう言うと、崇臣さんは後ろ手に持っていたワンピースを差し出した。私の寝室から持ってきたらしい。

「これを着て、5分後に玄関に集合すること」
「何でです?」
「琶月はここにいると、食事を忘れてしまうから」

……図星だ。言われてみれば、お腹が空いているような気がしなくもない。

「分かりました」

言えば、崇臣さんは満足そうに笑い、ワンピースを置いて去って行った。
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