拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
ワンピースに着替えるだけでは5分もかからない。ということは、きっと相応の準備をしろということなのだろう。

着替えた私は寝室に戻り、慌ててシンプルなメイクを施した。普段は梳くだけの髪もハーフアップにした。お洒落な髪の結び方は、このくらいしか知らない。

慌てて玄関に向かうと、崇臣さんはニコニコしながら待っていた。

「さすが、琶月は準備が早い。5分でも十分可愛いし、その服も似合ってるよ」

さらりと髪を撫でられ、急激に頬が火照る。

「からかわないでください!」
「からかってなどいないよ? ほら、靴どうぞ」

崇臣さんは私の前にひざまずき、5センチほどのヒールのパンプスを差し出した。

「え、この靴……」

見た目はブランド物っぽいけれど、見たことのない形だ。目をぱちくりさせていると、崇臣さんはいたずらっ子みたいに微笑んだ。

「ふふ、オーダーメイドだからね。これも琶月に、贈らせて。気づいたんだ、服を贈るだけじゃお出かけできないって」

なるほど、確かに私はいつも作業服に歩きやすいスニーカーだ。靴も、それしか持っていない。

「大丈夫、君のスニーカーを参考にオーダーしたから。履きやすいはずだよ」

いつの間に!

こんなに高級な靴、気後れして遠慮したくなる。けれど、出かける気になっている人の前で、履けないなど言えないし、こんな格好でスニーカーを履くのもはばかられる。

仕方なく、彼に差し出された靴に足を入れた。瞬間、足にフィットする。何度かその場で足踏みをして、その軽さと歩きやすさに感動した。ヒールがあっても、こんなに馴染むなんて!

「気に入った?」
「はい、とっても! わあ、なんかすごいです!」

言えば、崇臣さんはスマートに私の手を取る。そのまま、「じゃあ出かけようか」と部屋を出た。
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