拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
外へ出ると言っても、やってきたのはひとつ下の階だった。
レジデンスの34階はラウンジやジムやスパがあって、30階以上に住む入居者だけが使えるらしい。

崇臣さんは私の手を引き、ラウンジへ向かう。足を踏み入れた瞬間、間接照明が引き立てるシックなバーのような雰囲気に魅了された。

「どうぞ」

崇臣さんは、まるで王子様のように椅子を引き、私を窓際の席に座らせる。やってきた店員に素早く何かを注文すると、彼も私の隣に腰かけた。

東京の夜景が広がっている。こんなおしゃれな場所が併設されたレジデンスに住んでいるなんて、やっぱり彼はすごい。

しばらくして、テーブルにお肉やフルーツ、パンにスープが並んだ。どれも美味しそうだ。
並んだ料理にくぎ付けになっていると、「いただこうか」と崇臣さんが優しく微笑む。私も夢中になって、お肉やフルーツを頂いた。

「良かった、やっぱりお腹が空いてないわけじゃなかったんだね」

がっつきすぎた! と慌ててフォークを置く。すると崇臣さんは「いいよ、食べて食べて」と促してくれた。

「すみません、デザインに集中しちゃうと、どうしても食べるのも寝るのも忘れちゃって。そういう時って、反動でどこでも寝ちゃうんですけど、前に寮の床でつっぷして寝てたら社長が驚いて救急車呼んじゃったことがあって。あはは……」

恥ずかしくなって、つい『服飾バカ』と呼び名がついた、鉄板の自虐ネタを披露した。

「『服飾バカ』か。それ、俺も言われたね」

崇臣さんはケラケラ笑う。

「あ、でも私、これは褒め言葉だと思ってるんですよ!」
「ふふ、君らしい。でも今の話を聞いて、なおさら連れ出してよかったと思ったよ。君に倒れられたら、俺は気が気じゃない」
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