拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜

「どうしたの、その服」

出勤早々、工房の皆からツッコまれた。今日は崇臣さんセレクトのブランドのセットアップ服に、昨夜もらった５センチヒールを合わせてきたのだ。

「ＳＪＨの社員さんに、うちに出入りするなら作業服はやめてほしいと言われてしまって。あ、普段は作業服の方が全然着心地いいんですよ？」

説明すると、皆はふうんと言いながら、「愛の力じゃない？」と囁き合っているのが聞こえてしまった。

　◇

デザイン画の修正案、予算案、それに刺繍のパターン案。全てを持って、私はその日の午後、意気揚々とＳＪＨへ向かった。

ジュエリーブロッサムの扉を叩くと、さっそく「その服、いいじゃない」と言われた。よし、と心の中でガッツボーズをして、打ち合わせに挑む。

「デザイン画、どれも素敵で感激しました！　特に――」

言いながら、予算案に合うもの、自社で提供できる刺繍技術などのパターンをお見せしていく。皆、「可愛い！」とか、「素敵ですね」と好感触で、また心の中でガッツポーズを決めた。

「ねえ、せっかくだからサンプル作らない？」

ブランドマネージャーがそう言うと、皆が急に動き出した。
さすが行動が早い！　と感動したのも束の間、私にも指示が飛んでくる。

「その布、こっちのパターンで裁断して！　あっちで縫うから、運んでくれる？」
「はい！」

すごい。大手はデザイナーやパタンナー、サンプル制作は分業制なのだと思っていたけれど、ここの人たちは違うらしい。きっと皆、ものすごく服が好きなのだ。

「サイズは何に合わせますか？」
「そうね、一般的なＡ体型Ｂ７０のＭでいきましょう」

皆がそれぞれの役割を果たし、どんどんとサンプルが出来上がっていく。私は持ってきていたレース刺繍を縫い上げ、仕上げを施していく。