拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
男性がこちらを向いた。高身長の割に小さな頭に、優しそうなくっきり二重。その眉目秀麗な顔ももちろんかっこいいのだけれど、私の目は彼の着ていたスリーピーススーツに釘付けになった。

「ダークネイビーなのにツヤ感のある表面生地、クリアカットかな。さっきまで曲げてた腕にシワもないし、ハリ感もある。ダブルツイスト糸で織ってあるのかな、わぁすごい、絶対に高級な生地だ」
「ふふっ」

頭上で笑い声が聞こえ、はっと顔を上げた。

「すみません、つい!」
「いや、いいよ。そして御名答。面白いね、君」

見上げた彼は顎に手を置き、くっきり二重の目尻を下げてこちらを見下ろす。

「棗ソーイング工房さん」
「え?」
「君の作業服。右胸に、そう書いてある」
「あ!」

作業着の、右胸当たりを撫でた。我が工房の名前が刺繍してあるのだ。

「さっき社内で、啖呵切ってたのも君?」

細められた目の奥にあるのは、私を面白がるような瞳。
もしや彼、この会社の偉い方なのでは!?
思わず顔を背けた。そのままくるりと背を向け逃げようとしたら、なぜか腕を掴まれた。
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