拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「すごい……!」

ものの2時間で、サンプルが完成した。
トルソーにかけられた、2セットのインナーウェア。ブラジャー、ウエストニッパー、ショーツにガーターベルト。どれも上品さを持ちながら、蠱惑的な透け感もある縫い上がりだ。

見惚れていると、「意見出しするわよ」とブランドマネージャー。どうやら、完成した満足感に浸る時間はないらしい。

「ここ、もたつきありますね。脇の部分に刺繍が来ないような仕上がりにした方が」
「この素材、引っ張られると破けちゃいません? 強度大丈夫ですかね」
「柔らかい方が着心地もいいと思うのだけれど。あ、でも通気性も……」

すごい。ついていけない。今まで、私の仕事はぬるかったと思わざるを得ない。全員が全員、厳しい目を向け、最高の商品を作ろうとしているのだ。私も何か――

そう思っていると、とある社員が手を挙げた。

「実際に誰か着てみませんか? 着心地とかも、知りたいですし」

「誰が着る?」
から始まった議論は、一般的なサイズにぴったりで、かつ結婚が一番近いからという理由でなぜか私が推薦され。

「いいじゃない」
「崇臣副社長より私たちが先に見て妬かれないかしら?」
「なんなら彼も呼んじゃいましょうか」

などと、盛り上がり。

そして今、なぜかランジェリー姿の私の前に、崇臣さんがいる。
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