拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
どのくらいそうしていただろう。扉をノックする音に気づいて、慌てて涙を拭った。振り返ると、崇臣さんがこちらに駆け寄ってくる。

「琶月!」
「ごめんなさい」

崇臣さんはテーブルの上のデザイン案と、トルソーに掛けられた作りかけのドレスを見比べていた。ランジェリーの仕事をくれた、優しい彼を裏切ってしまったよう。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「いいじゃない、今は君の時間でしょ」
「でも……」

視線を落としてしまった私の頭を、崇臣さんは優しく撫でてくれる。気を遣わせていることに申し訳なくなって、また涙が溢れてしまいそうになる。

「これは、まだ決定事項ではないし、琶月に言うつもりはなかったんだけれど」

私の頭を撫で続けながら、崇臣さんは不意に言った。

「自社でドレスを作ってみようと思ってるんだ。ウェディングドレスをね」
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