拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「そうそう、それからここにきた本題はこっち」

崇臣さんはそう言うと、ポケットから四角い小さな箱を取り出した。その上部には、誰もが憧れるジュエリーブランドの名が刻まれている。崇臣さんはその蓋を開けると、私に向かって差し出した。

「やっと完成したんだ。どう?」
「とっても素敵です!」

胸が震えた。だって、こんなに素敵な輝き――

「これ、ピンクダイヤモンドですか? アッシャーカットだ、初めて見ましたよすごいクラリティーですね! わぁ、さすが無限の輝きって言われてるだけある……」

思わず夢中になってしまい、はっと顔を上げる。崇臣さんは、案の定ケラケラと笑っていた。

「ところで、『やっと』ってどういうことですか?」
「婚約指輪。琶月は俺の大切な、婚約者だからね」

脳が一瞬フリーズする。婚約指輪、ということは――。

「私、とてもじゃないけれど、こんなのつけられません!」

崇臣さんは「琶月ならそう言うと思ったよ」と、再びケラケラ笑い出す。

「普段は飾っておけばいい。その方が、君もいいでしょ? 着けて欲しい時は、俺から言うから」

あ……。

崇臣さんの言葉に、つけあがってしまったのだと気づいた。
私は、崇臣さんの特別ではない。私は、〝愛のない〟〝名ばかりの〟婚約者なのだ。

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、そうさせてもらいますね」

私は箱ごとそれを受け取った。
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