拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「待って、俺はこの会社の人間じゃない」
へ? と、頭だけ振り返った。彼は私の腕を掴んでいた手を離すと、ジャケットから名刺を取り出し私に差し出す。
「ランジェリーに、興味はない?」
「ランジェリー、ですか?」
訊き返したが、私は受け取った名刺を見て固まってしまった。
「SJH株式会社副社長、添嶋崇臣と申します。君と、ビジネスの話をしたいと思って」
SJHといえば、有名ブランドを多数持つ女性向けの大手インナーウェア会社だ。我に返り、慌ててポケットから名刺を取り出した。
「棗ソーイング工房の桜倉琶月と申します!」
差し出しながら頭を下げると、「琶月さん」となぜか下の名前を呼ばれた。
「このドレスも、君の工房が?」
副社長さんが、ショーウィンドウの中を指差す。
「はい、でも先程こちらとの契約は全ておじゃんにしてしまったので、もうここでドレスを作ることはないかと」
「そうか。……うん、気に入った。うちと契約しない?」
「SJHさんとですか!?」
「まあ、それもあるんだけど、個人的にも」
優しい笑みを向けられ、ゴクリと唾を飲む。
「じゃあ、お話を――」
「そうだね。ここで立ち話っていうのも何だし。君の勤め先は――」
副社長さんは渡した名刺を見る。
「墨田区か。車で送るから、その間に話そう」
彼の目線を追うと、いつからいたのか歩道に黒い高級車が横付けされていた。彼は後部座席を開け、私に乗るよう促す。
私が車に乗り込むと、後から乗り込んできた彼がドアを閉める。すると、さっそく副社長さんが口を開いた。
「君に、俺の婚約者になって欲しいんだ」
へ? と、頭だけ振り返った。彼は私の腕を掴んでいた手を離すと、ジャケットから名刺を取り出し私に差し出す。
「ランジェリーに、興味はない?」
「ランジェリー、ですか?」
訊き返したが、私は受け取った名刺を見て固まってしまった。
「SJH株式会社副社長、添嶋崇臣と申します。君と、ビジネスの話をしたいと思って」
SJHといえば、有名ブランドを多数持つ女性向けの大手インナーウェア会社だ。我に返り、慌ててポケットから名刺を取り出した。
「棗ソーイング工房の桜倉琶月と申します!」
差し出しながら頭を下げると、「琶月さん」となぜか下の名前を呼ばれた。
「このドレスも、君の工房が?」
副社長さんが、ショーウィンドウの中を指差す。
「はい、でも先程こちらとの契約は全ておじゃんにしてしまったので、もうここでドレスを作ることはないかと」
「そうか。……うん、気に入った。うちと契約しない?」
「SJHさんとですか!?」
「まあ、それもあるんだけど、個人的にも」
優しい笑みを向けられ、ゴクリと唾を飲む。
「じゃあ、お話を――」
「そうだね。ここで立ち話っていうのも何だし。君の勤め先は――」
副社長さんは渡した名刺を見る。
「墨田区か。車で送るから、その間に話そう」
彼の目線を追うと、いつからいたのか歩道に黒い高級車が横付けされていた。彼は後部座席を開け、私に乗るよう促す。
私が車に乗り込むと、後から乗り込んできた彼がドアを閉める。すると、さっそく副社長さんが口を開いた。
「君に、俺の婚約者になって欲しいんだ」