拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
お義姉さんの方を向くと、楽しそうな顔をした彼女と目が合った。

「ドレスもランジェリーも作れちゃうデザイナーさんで、努力も惜しまない頑張り屋さんで、しかもこんなに可愛い。崇臣くんがあなたに夢中になるのは分かるんだけれど、どうしてあなたは崇臣くんなのかなあって」
「それは――」

好きだから。こんなに尽くしてもらって、好きにならない人がいるのだろうか。

けれど、言えない。私と彼の間に愛はない。
彼が私に尽くしてくれるのは、私が見せかけの婚約者であり、仕事上必要な人材だからだ。

ちらりと左薬指に光る婚約指輪を見た。今日は兄夫婦に会うから、着けて欲しいと頼まれたのだ。これだって、こういう時のための見せかけのものなのだ。

「あら、黙っちゃって。それだけたくさん、思い当たることがあるってことかしら。初々しくていいわね、新婚さん」

黙っていただけなのに、お義姉さんは勝手に勘違いをして、うっとりしている。私も気持ちの良い施術を受けながら、けれど胸の中は複雑な気持ちでいっぱいになった。
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