拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
それでも、落ち込んでいる暇などない。ランジェリー製作、ドレス製作、モデルレッスンと、やらなければならないことは山積みだ。

それでもこの3か月、激務をこなしながらも睡眠と食事はちゃんととり、規則正しい生活を送れていた。崇臣さんが一緒にいるからだと思う。休日はお義姉さんとのレッスンで程よく疲れ、夜もよく眠れた。

そして迎えた、最後のレッスンの日。スパでいつものようにエステの施術を受けていると、お義姉さんがこちらに微笑んだ。

「琶月ちゃん、歩き方すっかり良くなった。姿勢もそうだし、なんだか自信がついたんじゃない?」
「そうでしょうか?」

確かに、最初はヒールで歩くことすらままならなかった。その点は、とても成長したとは思う。

「ランウェイを歩くのは、モデルとして。けれど、当日は結婚式の予行演習みたいな感じで、楽しむのがいいと思うわ」
「え?」
「だって、そのうち崇臣くんと挙式するんでしょう?」
「あ……そうですね」
「忘れてたの!? あはは、琶月ちゃん、面白い」

お義姉さんが豪華に笑うから、私も「すみません、ついうっかり」と笑い返した。
けれど、私と崇臣さんに挙式の予定なんてない。あくまで、私がコレクションに出演するのは、会社の広告のためなのだ。

でも一度決めたことはきっちりと頑張りたい。もちろん、日本中の――世界中の花嫁さんが、私のデザインしたドレスを着て、素敵な初夜を過ごしてくれるなら私も嬉しい。

「本番、頑張りますね」

言えば、お義姉さんは「その意気よ!」と微笑んでくれた。
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