拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「琶月ちゃん、大丈夫? 顔が青いけれど」
「平気です」

お義姉さんに訊かれ、そう答えたけれど、本当は全然平気じゃない。私が作ったドレスを、人件費がなんだって突っぱねたくせに、まるで自分の手柄のように、しかもコレクションで発表するなんて。

「どうです? 我が社の最新技術。AIによる刺繍の技術で、人の手と変わらないドレスを安価に作れるようになったんです」

そんな声が聞こえ、はらわたが煮えくり返りそうになった。いくら刺繍が機械だろうが、そのドレスをデザインしたのは私だ。確かに、施されている刺繍パターンは私が提案したものとは異なるようだが、ぱっと見は分からない。

それに、そのドレスに施されたレース刺繍は、どう考えてもうちの工房で手作業で入れた方が丁寧で輝くはずだ。それでも輝いて見えるのは、その刺繍の随所に宝石があしらわれているからだろう。
これでは、主役は刺繍ではなく宝石だ。なのに、それをはき違えるかのようなうたい文句にも腹が立つ。

けれど、ぐっとこらえた。ここで事を荒立てたら、SJHに――崇臣さんに、迷惑がかかってしまう。お腹に力を入れて、怒りを何とか抑え込めていると、不意にお義姉さんのスマホが鳴った。

「――え!? 相手役のモデルがまだ来てない!?」
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