拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
乗り込んだ高級車の中で、崇臣さんは私にガウンを羽織らせきっちりと前のボタンを留めてくれた。私はされるがままだったが、車がゆっくりと動き出してから、はっとした。

「崇臣さん、ありがとうございました!」
「うん?」

崇臣さんの優しい笑顔に、胸がキュンと鳴る。

「助けていただいたんですよね? 相手役のモデルが間に合わないから、崇臣さんが代役に――」

そこまで言うと、崇臣さんは「そうとられちゃったか」と、急にケラケラと笑い出した。
訳が分からずぽかんとしていると、崇臣さんは笑いながらも言う。

「違うよ、サプライズだ」
「へ?」
「元々俺が琶月の相手役をやる予定だったんだ。けれど、きっと練習してしまっては〝本物の感動〟を届けられないと思ってね」
「うん?」
「リング交換の時の琶月の涙ぐんだ顔。嬉しそうに涙を堪えながら歩く姿。本物のウェディングみたいだと思わない?」
「ああ、なるほど――」

つまり、崇臣さんはより印象的な広告にするつもりで、サプライズな演出を仕組んだということか。だったら、その意図は大成功だったわけだけれど――。

「もう! 私ばっかりドキドキしちゃったじゃないですか!」
「いや、俺もドキドキしたよ? 他でもない、琶月との疑似結婚式を挙げられたんだから」
「え?」
「だって、誰よりも大切な、琶月の新郎役だよ?」
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