拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜

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翌朝目が覚めると、崇臣さんはベッドから身体を起こしてタブレット端末を見ていた。たくましい上半身が目に入り、昨夜の幸せは夢ではなかったのだと実感する。

「何見てるんですか？」

訊けば、「おはよう」と微笑んだ崇臣さんが画面をこちらに向けてくれた。

「昨夜のコレクション、もうネットニュースになってる。ほら、琶月と俺だよ」

見れば、【大胆な演出と副社長自らの出演、ＳＪＨ衝撃のウエディング業界参入】の見出しと、ランジェリー姿で絡み合う私と崇臣さんが納められた写真が目に入る。

は、恥ずかしい……っ！
けれど、崇臣さんは満足そうに微笑んでいる。

「昨夜から、関係各所から電話もメールも止まらないって、兄さんから連絡があったよ」

記事を見ていると、崇臣さんはそう言ってケラケラ笑った。

記事には、
『ひとつひとつ手作業で縫い込まれた刺繍は、職人の心のこもった温かみのあるドレス。想いを込めて縫い上げられたランジェリーで、パートナーとの最高の一夜を』
と、ジュエリーブロッサムの理念もちゃんと書いてある。

記事にはタチバナブライダルの新ブランドのテーマ、
『ＡＩと刺繍の技術で、人の手と変わらないドレスを安価に』
も書かれていたが、それはとても小さくて。

「なんだか申し訳ないね。AIとドレスなんてすごい掛け合わせなのに、話題は全部うちが掻っ攫っちゃって」

全然悪びれていないような声に、思わずクスクス笑ってしまった。なんだか胸がスッとして、それで気がついた。崇臣さんは最初から、私のタチバナブライダルに対する気持ちを晴らす為に、今回の演出をしてくれたんじゃないか、と。

改めて、すごい人だ。
ブランドの広告を大成功を収めただけでなく、私の心も救ってくれたんだから。