拾われデザイナーと魅惑のランジェリー 〜副社長は名ばかり婚約者を溺愛中〜
「あ、君、恋人はいる? だったら失礼だったな……」
「いません、けど……」

恋人は現在どころか、過去にもいたことがない。

「君、いくつ?」
「26です」
「なら丁度いいな、俺は29。もちろん、婚約に愛は求めない。そうだな、互いにいい人ができたらお別れする、なんてのはどうたろう?」

彼が私をじっと見る。するとなぜか、胸が変な風に騒ぎ出す。思わず目を伏せ、考えた。

「仕事の代金は、相応分きちんと支払う。もちろん、下請けだからと搾取をするつもりもない。どうか、引き受けてくれないかな」

切望するような声色。私だって、工房を潰すわけにはいかない。腹を括ろう。

「分かりました。まずは社長にOKを貰えるよう――」
「それは大丈夫。俺から話すよ、琶月」
「え、いきなり呼び捨て――」
「君も俺のことは名前で呼んで。ほら、降りるよ」

いつの間にか車は、工房の前に着いていた。
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