恋の病に、堕ちてゆく。
すぐに車の行き交いが激しい大通りに出た。

とくに話をするわけでなく青波と四季は窓の外を見ている。ぼんやり眺めているというよりは、外を警戒しているようだ。四季でさえ無駄口を叩かず真剣な表情で目を配らせていた。

そして前後に同じ車がずっと張り付いていて、やはり仲間のようだ。大きな誘拐組織なのかな…。関わりたくないから深入りはしないようにしようと、気付かないフリをした。

目隠しをされるわけでもなく、サングラスなので周りの状況が確認できた。だけど自分が今、どこにいるのかは分からない。見覚えのない場所だった。

時折、信号で車が止まる。

窓を開けて"助けて"と叫びたい気持ちを堪えて、水族館に着くまで大人しく座っていた。

今日の目的は、ただ身体を動かして息抜きをするだけだ。それ以上のことは今、考えないようにしよう。

やがて見えて来た建物はイルカショーで有名な水族館で、来たことはないけれどその名前は知っている。

ここは、都内だ。
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