恋の病に、堕ちてゆく。
綺麗な魚が泳いでいても、はしゃぐ気持ちにはなれない。

群から離れてしまった小魚を見つけた。
今の私と、同じだ。

青波はなにも言わない。
私の隣りに立って同じ水槽を見ているだけだ。誰も楽しくないし、やっぱり来ない方が良かったのな。

感想を言い合うわけでもなく、淡々と水槽を回る。
じっくり興味をもって観察するわけではないから、すぐに次の水槽に移動する。

「お腹は空かない?」

「空きません」

休館日の館内で何か食べられるのかは知らないけれど、全くお腹は空いてなかった。

「イルカショーは興味ある?」

「…はい」

どうせなら、見て帰ろうかな。そんな気持ちだ。

「よし、待ってて」

「はい」

入り口付近で待機している館長の元に駆け寄り、声をかけていた。
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