恋の病に、堕ちてゆく。
「全然、楽しそうじゃないね」

四季が近付いてきた。

「女の子って、青波さんとデートしたいって思わないの?」

水槽から目を離さず四季は言った。

「はい?」

誘拐されている身分でデート?

「今日は加奈ちゃんの気分転換を目的に来たのに、全然楽しそうじゃないじゃん。隣りには文句なしのイケメンがいるっていうのにね!」

「イケメンでも、誘拐犯ですよ?」

楽しめという方がどうかしてる。

水槽をトントンと叩きながら、四季は笑った。


「この誘拐にも深い理由があるんだよ。別に僕たちは加奈ちゃんを傷つけてたいわけじゃないし、実際、手荒なマネはしてないでしょ」

まぁ、背中の傷は別の人だと言うし、
ベッドに押し倒されて忠告されたくらいだ。

深い理由?それを知りたいんだよ。


「まぁ、楽しめば?誘拐のことは忘れて、青波さんとデートしてるって思えばいいじゃん。あんなイケメンと、デートする機会はこの先ないと思うよ〜」

ただのイケメンなら良いんですけどね!

そう反論する前に、青波が戻って来て四季はすっと離れて行った。
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